純情boogying
庇ったのは
「ちょ……っ、何やってんの。美姫さん、自分の子供でしょ?」
「だぁって、……可愛くない。いらなかったし。」
少し焦ったような物言いの男と、自分のやったことなんて微塵も自覚してないバカ。
虐待は犯罪だよ知らねーのかニュースでもやってんだろっつーかそもそもこれ傷害罪だから。
お前いちいち送検されてたら前科何犯になってんのかね?
「……暴力、は、良くないよ。」
「うぅん、りゅーくんがそう言うならぁ、そうするぅ。」
あぁ、なんて無様だ俺は。
あのクソ女から、あのクソ女が惚れてるらしい男に庇われてる。
やっとの事で眼鏡を見付けて、じくじくと熱を持って痛む耳を我慢してとりあえず視力を取り戻した。
酔ったあの女の足元がふらついて、横に立っていたホストと思しき恐ろしく男前なにーちゃんにもたれ掛かる。
細身なくせに、その女受け止められるなんて凄いね。
『アンタ……ホスト?』
「だけど。何?」
りゅーくんに向かって、なによぉ、アンタってぇ。
どっかの馬鹿のイキる声が聞こえる。
うるせぇ。
テメェなんざ利用価値無いと分かればすぐに捨てられんに決まってんだろ。
男の事しか考えらんねぇメス豚が。
お前、その容姿で、モテるとか思ってんのか?ホストのリップサービス本気にしてんのか?
何処までおめでたいんだテメェは。
『この女……もう、有り金無いよ。通帳もすっからかん、家の権利書も無い、持ってたブランド物も全部売りさばいてる辺り、もうツケで飲んでるんでしょ?
止めといた方がいいよ。コイツに支払い能力なんて無い。』
最後に捨てられろ。
ざまぁ見ろ。
「……今の話、ホント?」
「何、何、ゆってんのょ、アンタ……ッバカ、バカァッ、りゅーくんの前でぇぇっ……」
面食らえ。慌てろ。絶望しろ。
俺が生まれてから約15年、搾取され続けて来た0.01%でもいいから思い知れ。
「ねぇ……ちょっと、金出せないなら俺もう帰るけど。」
「えっ……違うの、違うのりゅーくん。……今日は、出せるから……ッ」
「つーか……どっちにしろ、もうツケでうちの店来てんじゃん?アンタ。その尻持つの担当の俺なんだけど。あーあ。とんだハズレくじ。
俺帰るから。」
その通りすげぇハズレだよ。残念だったねアンタ。
そしてもう二度とくんな。
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