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純情boogying
幼少期
 


あの女の事について色々と思い出しながら……吐きそうになる程の嫌悪感といらつきに喉元を押さえた。


……ベッドなんて見たもんだから、幼い頃の夜の記憶が蘇って来ちまった……。



あの、薄い壁の向こうから、ベッドが軋む音を響かせながら断続的に聞こえて来たあの女の甲高いうめき声。


「死ぬ死ぬ」
だの
「もうダメ」
だの叫んでるから、俺は、いつも布団を頭まで被って言いようの無い恐怖感と本能が生む震えに堪えながら

『だったら死ね。お前なんかいらないいらない……』

と、声が聞こえてくる度切実に祈っていた。

保険体育の授業や教室で本を読んでて耳に挟む会話に、中学に上がる辺りであの声の正体を知ってその時に吐き気すら覚えて。
(相手の男には同情した。)


……あぁ、また、思い出してしまった。




和子さんがいないこの家にはもはや用は無い。
荷物を纏めて借金取りでも来る前にとっとと出て行こう。


最初から自分の物なんて全然無かったから、荷造りは俺が驚くほどすぐに終わってしまった。

服と、学校の教科書と(まだ行けるとは思ってないが、あって不自由はしない。)和子さんが亡くなった時、しばらく仕事を休まざるを得なくなった時断りを入れた時に受け取った新聞配達のバイト代とを学校の鞄に詰め込んで(俺は、あの女と違って鞄はこれ一つしか持ってない。)、これからの季節のためそれの他に何も入っていないクローゼットから学校で使ってるダッフルコートを取り出してバッグと一緒に脇に抱えた。


あとは、和子さんの遺骨を少し持ってこの家を出よう。

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あきゅろす。
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