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純情boogying

 


そんな和子さんが、俺の事を守ってくれて……それで、俺はギリギリのバランスを保っていて。

あの馬鹿な女が惚れた男に目付きが似ているらしい俺が叩かれたり蹴られたりするのも和子さんが庇ってくれようとしていた。


(勿論、俺よりもろくな物を食べていなくて本当に細く痩せ細っていた和子さんにそんな事させられる筈も無く、殴られるのはいつも俺だけにしてもらってたが、その気持ちがスゴイ嬉しかった。)


どうやら別れ際に
「迎えに行くから」
と言われて、愚かにもその言葉を信じて、俺が生まれて、数年してやっと自分が捨てられたことに気付いたらしい。


俺の名前は、そのバカ女が惚れた男が店で使っていた源氏名だ。



……でも、和子さんは俺の名前を本当に愛おしそうに呼んでくれて……
俺は、和子さんが【楓さん】って、そう呼ぶのは好きだった。

……和子さんが呼んでくれる時は。



「楓さん。」




…………え?



呼ばれた気がした。顔を上げて、耳を済ました。
……呼んでくれる人はもういないと解ってはいたけど。


俺が小さい頃近所の人に一緒に撮ってもらった写真を無理矢理引き延ばした少しぼやけた和子さん。

あの人が写ってる唯一の写真。


遺影の中の笑ってる影と目があった。



……この前、言われたことを、不意に思い出した。




「楓さん、あなたのお母様は……見ての通りの方でしょう?
だから、まだ15歳の貴方には酷でしょうけど……あなたが頑張らなければ。
……ね?
……お母様も、可哀相な方なんですよ……?」



……そうだ、俺がこれから税金払ったり生活費やりくりしたりしなきゃいけないんだ。

しっかりしろ。泣いてる場合か。
馬鹿やってたら俺は確実に路頭に迷う。……確実に。

後先考えずに街金から怪しいローンまで限度額いっぱいまで金借りて自己破産する考えも無く言われたまま自分の息子に掛けた生命保険で清算しそうだ。
冗談なんかじゃ無く本気で。


和子さんが管理してた通帳と和子さんの通帳を確保してとりあえず今月の光熱費ガス代水道代払わないと……
あと、年末だし、固定資産税なんかのことも考えないと、だ。

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あきゅろす。
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