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純情boogying

 



でも、俺は、小さい頃から……自分から進んで和子さんから家事を習っていた。


それは和子さんを失ったときの事を考えてじゃなくて、階段の上り下りさえ辛そうになった和子さんの負担を軽減させる為で。


料理も、洗濯も、掃除も、苦じゃ無かった。
上手く出来ると和子さんが皺の浮かんだ目元を細めて

「楓さん、上手になりましたね。」

って、褒めてくれたから。


もちろん学校の勉強も頑張った。
テストで100点取るたび、学年で一位になるたび、和子さんが

「まぁ、楓さん、頑張りなすったのね。
私も鼻が高いわ。」

まるで、自分の事の様に喜んでくれたから、俺は毎回頑張ったのに。


中学出たら働こうと思ってた俺に和子さんが
「大学までちゃんと行きなさい。
楓さんが良い学校に行って、立派な会社に入る所を見せて……あたしには子供がいないから、年寄りに道楽させて頂戴な。」

だから、良い学校に進んで、和子さんの事喜ばせよう、って。


朝まだ夜が明けぬうちに起きて新聞配達して、学校の勉強もして帰って来てすぐ家事をして寝る寸前まで勉強して。
そんな生活も、将来いい仕事について和子さんに楽させようと思ったらちっとも大変だとは思わなかったのに。


あの女の罵声も叱咤も暴力も何だって我慢くらい出来たのに。

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あきゅろす。
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