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純情boogying
閉め出す?
 

「何で泣いてたん。」

『……何でもありません。』



依然として変わらない答えに、目の前にある……何とか視認出来る表情が、少し辛そうに歪んだ。


「……アキちゃん……俺の事、アキちゃんの中から出さんといて。」

『……え?』

「俺の事、アキちゃんの中置いてくれん?
閉め出さんで……理由聞かせて。」







「心配かけるとか、気にせんといてや。
俺は、アキちゃんに拒否られんのが1番ツライ。」



ちゅ、ちゅ、と唇に音を立てて口付けが落とされた。



腕の拘束が解かれて、両方のがっしりした腕が背中に回る。

俺が本当の理由を隠したから、未智さんがツライ、……それが嫌だった。
迷惑かけたく無かった、でも、心配させる事になるなんて思わなかった。


だから、


『……嫌な事夢に見て、思い出して、……泣いてたんです。』


少しだけ弱音を吐いた。




「嫌な夢見ただけで吐くん?」


吐いた、のは、現場を見れば一目瞭然だろう。
泣いただけでは口まで水で濡らさないし、何より換気扇をかけていても微かに胃液の臭いが残っている。


『……トラウマ、あるんで……思い出すと、気持ち悪くなるんです……』





「そのトラウマて……何?何の夢見たん?」








『……俺の事産んだ女が、俺の事殴る、夢……』




目の前の未智さんの視線がふっ、と動いて俺の胸に落とされた。

……見たのかな。この傷。




「そっか、辛かったんな。
もう大丈夫やから。……誰も、もうアキちゃんにそないな事せぇへんから。」


一旦きつめに抱きしめられた後、横向きに抱き上げられた。


「……身体、冷えちゃったなぁ。ホットミルク作ったるから、飲むか?
喉も胃液で焼けてヒリヒリして痛いやろ?」


『何で……未智さん、そんな事判るんですか……?』



胃液で、粘膜が熔ける感触。
じくじくする……痛いの。



未智さんは、口の端だけ上げて少し悲しそうに笑った。

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