純情boogying
いつも
『い、……痛、やだぁ………ッ!!』
あの女の前では決して屈服などしてやるか、と、泣くどころか痛がってる様子さえ見せなかったが、その実殴られたり蹴られたりは何度されても痛みに馴れる事は無く
あの女が消えてから一人で浴室や自分の部屋で膝を抱えて声を殺して泣いていた。
和子さんにも心配はかけられないし、誰か他の人間に訴えて児童相談所にでも通報されるのも避けたい事態だったから。
……元は【良家のお嬢様】のあの女は、結構に演技が上手くて。
流石に異常を感じた近所の人間が通報をしても、元々面倒事を避けたかったらしい俺の住んでる地区の担当者は話を聞き流して厳重注意、や数日間の俺の保護で済ましてしまって。
注意された、その怒りを監督員が帰った後俺にぶつけて
俺が施設に一時避難してるときは和子さんにそれが向けられて
俺は、それが自分が殴られるのより辛かった。
今度こそ逃れられるかも、と思って何度かそれが繰り返されてから、俺は近所の偽善者に、どうぞ気にしないでください。俺はあの家から離れたくないので、通報はしないでください。お願いします。と頭を下げに行ったのを覚えている。
仮眠室から出て、廊下を挟んで斜め前のトイレに入って、扉を閉めた。
壁伝いにずるずると座り込んで、膝を抱えて瞼をきつく綴じる。声を出さないように涙を零した。
『……ッッ、……うっ、……ぅ、ぅええ……』
それでも堪え切れなかった鳴咽が、くぐもってタイルに跳ね返って小さく響いていた。
『……っぐ、』
焼け付くような痛みを思い出して、這うようにして便器まで移動する。
内蔵全部握られて絞られるような不快感に、胃の中の物を全て吐き出していた。
胃の中身が全部無くなっても不快感は消えず、尚自分からの不純物の排泄を試みる身体はとうとう胃液まで吐き出させた。
焼け付くような喉の痛みに噎せて、ひりひりする粘膜からする独特のきつい臭いに眉をしかめた。
強引に顔を上げ、水道の蛇口の下、勢いよく出した水に両手を突っ込んで顔を洗った。
吐き気と震えを抑えるため、口の中を漱ぐ。
そうするといくらか過去のフラッシュバックは止んで、漸くまともに呼吸が出来るようになった。
『……っく、ひぅ……く、ぅ……』
まだ、涙は……止まらなかったけど。
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