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純情boogying

 

殴られると、そこから一瞬堪え難い激痛が全身に走り、息が詰まる。

いつも通り、痛みはそのうち熱に変わった。
慢性的にジンジンと疼くそこは、既に痛覚は無く、蹴られるたび響く衝撃に軋む体を自分の腕で抱きしめてただひたすらこの時間が過ぎるのを待った。

あと少し、あと少しすればコイツは俺を蹴るのに飽きて、また自分の部屋に戻っていく。



そうしたら、痣の手当をして殴られた顔を冷やして夕食の支度をしなければ。

ホラ、外はもうこんなに暗い。



「聞いてんのお前はッッ!!」


ガツン、と空中に大きく弧を描いた木製ハンガーが、俺の頬に思い切りブチ当たってその勢いのまま振り抜かれた。

くぅ、と鼻の奥から熱いものが沸き上がる感覚。

慣れっこだったが、鼻血が出たらしかった。



早く終わらないかな。

痛いのは嫌だ。




殴られると、自分が本当に惨めに感じるから。





『……ッッひ、あ゛……』




身体中に汗をかいて、跳び起きた。

指先が冷え切って、細かく震えていた。


止めようと思っても止まらない寒気と吐き気とに気管が塞がれ、半ば転がり落ちるようにベッドを出た。



俺はその時

目をつむっても浮かんでくる……あの女がこれまで与えてくれた光景に、すぐそこに居る人達の存在が俺にとってどんな意味をもたらすのかさえも思い出せず


和子さんが死んだことを思い知らされて、あの女の夢を見て、声を堪えて部屋の外に出るので精一杯だった。

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