極楽蝶華
助け!!……かな?
力の限りにドアを拳でガンガン叩きながら大声を出した。
……うぅ、腕から伝わる振動が頭痛に響く脳みそに優しくない……
ドアスコープの向こうで、奈緒先輩がびっくりした顔をしてこっちを見て、俺の名前を呼ぶように唇が動いた。
急いでドアに駆け寄って来て、すぐにインターフォンが鳴る。
『あっ、奈緒先輩、俺で……』
受話器からは、とてつもなく黒い声が染み出してきた。
「……何でそこにいるの?」
ここここここ怖ぇぇぇぇええ!!
きっと今サーモグラフィーとかあったら尋常じゃない何かを検知するはず……
『お、俺も、何でだか分からないんです。あの、ここ、外から鍵掛かってて出られなくて・・・…
奈緒先輩…助けて・・・…』
「……管理人の所に行ってくる。待ってて、すぐ戻るから。」
心配そうな(でも黒い)声とともにインターフォンの接続が切られた。
ドアスコープを覗くと、遠ざかる背中が見えた。
……ちょ、俺、俊と対決するのとブラックの方の奈緒先輩と精神的デスマッチくりひろげるのとどっちがマシだった?
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