極楽蝶華
2
この近辺にある藤堂グループ関連の会社はここしかないから、おそらく間違ってない、とは……思うが‥‥
ナル(迷子の男の子。さっき名乗ったので愛称で呼んでいる)も父親に連れられ来たことがあるらしい。やはり、ここでいいのか。
それにしても本社かよ。……敷居高ぇな。
高級なエントランスに委縮しつつも、俺はとりあえず受け付けに向かった。
『すいません』
顔を上げた受け付け嬢が驚いたように目を見張る。こちらをジロジロ見てくるが……やっぱ制服は目立つ?よな。オフィス街じゃ。
「…………。」
『あの、スイマセン。ちょっといいですか?』
「えっ?
……あ、は、はい!!」
……あと、やっぱ俺のこの髪の色だろうなぁ。
珍しいからな、銀色なんて。
『この子、父親に会いに来たんだって言うんだけど、内線繋げていただけますか?』
ナルを胸まで持ち上げて愛想良く頼んでみた。アポがどうのこうの、とは言われないだろうがまさか不審者にはされないだろうな。
天使のようなナルを見てお姉さん方も顔がゆるんだ。
俺はその様子にそっと胸を撫で下ろす。
「お名前は?」
「Steeb-T-Rolence」
お父さんの方だよ、と俺が言うとナルは恥ずかしそうに頬を少し染めて俯いた。
うんうん。微笑ましい。
「Haruki-Todo」
ナルがそう言うと受け付けがびっくりしたような顔をして、眉根を微かに寄せて疑問詞を表情に浮かべた。
『何か‥‥あるんですか?』
「藤堂……悠貴、様の……ご子息……?」
受け付けが口籠もっていると、エレベータホールから歩いてきた男性が足を止め、それにナルが反応した。
「……Steeb?」
「Daddy!」
ナルがその男の方に走っていく。あの人がお父さんか。
髪の色素は薄めだが、顔付きは日本人だ。ってことはナルはハーフかな。
一通り何か話した父親は礼を言おうとこちらを向いて固まった。
「兄さん…?悠臣…か…?」
『へっ??』
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