極楽蝶華
似てるんだな。
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ちょっとだけ、と言われて額にずらされたゴーグルの下からは鮮血の色を薄めたような淡紅の瞳が出て来た。
室内、それに獅子緒が影を作っているのに澤村は少し眩しそうに眉を歪めた。
聞いたことがある。
色素の無い瞳で太陽の下に出ると網膜が焼けるのだと。確か羞明と言ったか。
「アルビノちゅーても、正式な名前は眼白皮症ゆうてな、これは殆ど男にしか現れない病気なんよ。伴性遺伝なんでな。
あぁ、ゆーの方は眼皮膚白皮症W型ちゅーんやてな。
なんか症状出てるとことその具合で色々呼び方変わるみたいじゃな。」
もう辛くなったのか、早々にゴーグルを元の位置に戻した澤村がそう言う。
ありがとな、そう言われた獅子緒が席に戻った。
「俺はまだ運よく弱視とか、斜視とかはまだ出てないんだがなー……
……つーか、にーちゃんたちいきなり無口になって気持ち悪いんだがのぅ。」
うへー、っと言うように澤村が口を歪ませた。
『……似てるんだな。』
「あ?
あー……あぁ。ちっちゃいころからよぅ言われてるのぅ。なぁ。」
「うん。よく兄弟と間違えられたよな。」
流石に俺と猛みたいに瓜二つ、とまではいかないが、従兄弟にしては随分似ていると言っていいだろう。
「な?わかったじゃろ?
自分に似た顔に惚れた腫れたは無理じゃ。俺ぁナルシストじゃないけぇ。」
大事そうにパソコンを撫でる澤村。その言葉に納得がいった。
確かに無理だな。自分と同じ顔とまではいかないが、あそこまで似てたら恋は出来ない。
そして多分猛も同じ事を考えているだろう。
「澤村さん、」
「ん?敦でえぇよ。」
うちの末弟が口を開いた。澤村の顔を見て考え込んだようなそぶりを見せたが一体何を思ったのだろうか。
「……じゃあ、敦さん。」
「何?」
「悠紀仁さんて言うより、悠臣さん似なんですね。」
悠紀仁は何も反応しなかったが、澤村の口元が少し強張った。
ような気がした。
1番心が現れる肝心の目はゴーグルで覆われている。
「……気のせいちゃうかなぁ。
姉妹なんは母親同士じゃけぇ。」
「そう……ですか。」
透が少し首を傾げ、その後特には気にしなかったのか自分の頼んだハンバーガーに視線を戻した。
俺もその時は澤村の言葉を深くは考えなかったし、考えようともしなかった。
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