極楽蝶華
3
『おう彰、勝利おめでとう。お祝いに何か飲みもん奢ってやろうか?』
「マジで?チョー嬉しいわー。いやぁ、13連戦中真剣勝負で席立てなかったし、集中しすぎて喉カラカラだからめっちゃ水分欲しかったんだよー。」
そう言って笑う彰の顔はまるで、炎天下にランニングでもしたかのように汗でびっしょりだった。
おまwwwwゲームしかやってないのに何でそんな汗かいてんのwwww
「どーした?そんな笑って……」
『いやだって、彰が……』
言葉を続けようとした俺の視界に、敦さんと潤が同じ機械で新しく対戦プレイを始めて
試合開始1秒もたたないうちに、ひとつのコマンドも入れる時間さえ与えられないまま宙に打ち上げられた後、
滅多うちにされ、コンボを刻まれ、仕上げとばかりにMAXまで溜まったゲージで必殺技食らってあっという間に潤が第1round負けたのが見えて
思わず何て続けるか忘れて、口を開けたまま言葉を失っていた。
「え?え?え、……え?」
「何じゃ、本気の俺と対戦してみたいゆうたのじゅんじゅんやでー?ホラ、第2round始まる。よそ見しよらんと。」
自分自身すら何が起こったのか理解が出来なかったらしい潤が、短い疑問詞を口にする。
いや、そうなるのも当然だろうと……また始まった完全試合を眺めながら、『このゲームってこんな一方的な勝ち方出来たっけ?』と考えていた。
『彰……お前、あれに勝ったの?』
俺は画面から目が離せないまま、横で顔の汗をTシャツの袖で拭う彰に問いかけた。
「おう……いやぁ、それでもギリギリだけどな。
運が良かっただけだよ。」
こ、こいつ……
格ゲーの話なのになんてカッコイイ事を言いやがるんだ!
今のがバスケの試合の後の台詞だったら、立派に青春漫画の1コマだったぜ、彰。
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