極楽蝶華 これ、お前が……? 『なぁ……どうした?』 泣いているばかりで、答えは無い。 「ねぇ、ユウ、珈琲入ったよ?」 『はぁ? ……っお前、目の前に泣いてる子がいて何で何にもしねぇの?!』 え、と目を見開いたレオが分からない、でも言った風に首を傾ける。 「何で?」 『何で、じゃねぇよ。 ……あぁ、もう。先にこの子…… なぁ、平気?何があったん?』 落ち着けようと背中を撫で……ようとして…… その先の温度にびっくりして思わず手を引いた。 『熱ッ!! な……にコレ……』 「あぁ、駄目だよユウ。 火傷しちゃうよ?」 『へ? つかお前、知って……?』 屈んだ先、茶色く染みたシャツから香る、鼻孔に満ちた甘い……香ばしい香り。 それと、辺りに散らばる角砂糖に意識が奪われた。 『こ、れ……俺の……?』 俺が……お前に頼んだヤツ? 「あ、ゴメンね?今淹れ直したから。」 「……ユウ?どうしたの? 早く席戻ろうよ。」 俺の耳に、レオの言葉なんか入って来なかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |