極楽蝶華
鈴峰彰の憂鬱
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鈴峰彰(16)は、第二体育館入口に見えたその光景に血の気が引いた。
さぁぁぁぁ……、と音を立てて背中がそら寒くなっていく。
……な……
……な……
何で変装取っ払って来るんだよぉぉぉぉぉッ!!
彰は自分の短絡的思考を後悔した。
『どーせ不動が一緒だろ。注意はしてくれてるに違いない』
先輩にせっつかれて変装について注意をしなかった自分が悪い。
その後メールでも言えたはずなのに……
『……揚げ句獅子緒先輩付きかよ……』
とんでもない付属だ。
ましてや自分はあの教室の一見で顔を覚えられている。しかも嫌な方向で。
……そいつが、自分の思い人を呼び出して……もしかすると二人の時間を邪魔してたりしたら……
心臓が一回り縮み上がった気がした。
「あ……おーい彰ぁー!!」
唯一の幸運は、先輩達に
【身長は低めだが速いし上手いしダンクも出来るちょっと有名になっちゃってる(悠紀仁の姿でもあいつは十分話題を提供してる)俺の友人】
の名前をまだ言ってなくて良かった。
特筆すべきプレーの様子について熱く語っていて、うっかり名前を言い忘れて良かった……本当に……。
俺の所為で悠紀仁の正体がバレて今よりもっと周りが悠紀仁を狙う様になったら、それこそ獅子緒先輩だけじゃ無く生徒会の皆様からの制裁まで考えなければならない。
そうすると俺の命が(生命的、社会的に)いつまであるかどうか心配してるところだった。マジで。
イヤ冗談じゃ無しに。
「えっ……何、鈴峰ユウちゃんと友達なの?!」
「マジマジうわぁヤベーどうしよう可愛い!!」
「……顔可愛ぃー腰細ぇー鎖骨……あぁ〜〜……旨そう……」
しかも、
【バスケ部のレギュラーにはランキング上位の人もいるから、恋愛抜きで悠紀仁を気に入らせれば嫌がらせも減るんじゃないか】
という目論見は見事に崩れた。
一回プレー見せたら嫌でも同一人物と気付くだろう。
……気付いてから気に入らせたら駄目なんだ。うん。
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