極楽蝶華 どこまでも優しい □■□■□■□■□■□■ 「ねぇ、僕談話室行くから。俊達も、ここだと外野が煩いから移動しない?」 目ぇ笑ってねぇーヨ。副カイチョ。 「……獅子緒、行くぞ。」 「で、……悠紀仁が、何?」 『……ユウは優しいから……。人の事憎んだり、本気で怒ったり……慣れてねぇんだよ。 それでも自分の感情全部は出せなくて、持て余して具合悪くなっちまうんだ。』 「……俺の事でキレてくれた、っつーのが嬉しいね。」 『耳聞こえてんのか。ユウはな、優しいんだよ。テメェーらみてぇな俺様野郎にもな。』 「でもさ、本宮アレ顎外れたんじゃねぇーの?悠紀仁の蹴りモロに喰らったんだろ?」 「獅子緒が殴って鼻も潰れてたしな。マヌケ面がどうなるか楽しみだ。」 口の端だけ上げて笑った後、俊が先に談話室内に入っていた奈緒の元に歩み寄った。 「悠紀仁、平気か?」 その膝の上に抱かれている人物の顔を覗き込んで心配そうに伺う。 「……ちょっと、ダメ。 お腹減って気持ちワルイのもあるし……。ダメ。」 ぎゅう、と副会長の首に回された細い腕。 さっきまで自分の首に抱き着いてたのに、と少し不機嫌になる。 『……ユウ、チョコ食べる?』 「……食べる。さんきゅ。」 もそもそと、痛々しいくらいに色の失せた白い手がこちらに延びる。 小さい手に赤いパッケージを握らせて、その手の甲に口付けを落とした。 『ユウ……具合、平気? 気持ち悪いの治まった?』 「……だいぶ。 ゴメンな?心配かけて……。」 ふぅ、と少し辛そうに息を吐き出している。 『謝んないで。ユウ。 俺が好きでやってんの。』 「……さんきゅ。」 に、といつもより力無く笑ってチョコを食べ出した。 「……だから本宮に近づくな、っつっただろ。」 「……悪ぃ。」 パキン、と板チョコが欠ける。 「ッ、俊、それ今言うことじゃねぇだろ?! ……悠紀仁、気にすんなよ。」 「……何かあってからじゃ遅いだろ? なぁ、悠紀仁。俺心配してたんだよ。別に怒ってねぇから。」 「……ん。」 ぐりぐり、と頭を撫でられてユウが少し目を細めた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |