極楽蝶華
メール
教室に入った途端、自分の席の周りに集まっている5人が真剣な眼差しを向けてきた。
「悠紀仁。」
『あー……灰斗。……さん。何でしょうか。』
「これどういう事。」
目の前に突き出されたのは灰斗のケータイ。
そこに表示されている文字を概略して読み上げていった。
何回も何回も打ち損じては文章に悩んで何回か泣きそうになって、送信ボタン押すのが辛かったメールだから見なくても言える、けど。
『………【好意は嬉しいけど周りの目に耐えられないので。】』
そこまで一気に読み上げて、一旦息を吸う。
『【もう友達は止めてください。】』
昨日の晩一括送信した文面を口に出した。
舌の上を、虚偽が、転がり落ちる。
ざわめいた教室の中、俺らな周りだけが夏なのに冷たく重く沈んだ空気に静寂を包んでいた。
「……本気で言ってるの?」
『……うん。』
「なぁ……ゆきやん、周りうるさいなら俺らちゃんとどうにかするし。
んな淋しいこと言わんといてや。」
周りなんて気にならないよ。陰口は慣れてるし。
そんなちっせぇーことでお前らの側離れたくねぇよ?
『いや……いいんだよもう。今まで友達でいてくれてさ、ありがと。』
でも、これからは、
「……お前は何を気にしてんだよ。」
「俺らが近くにいるせいで色々嫌がらせ受けてるみたいだから、……ッ、俺が……言える事じゃねぇんだけどさぁっ……!!」
誠が、今にも泣きそうな顔で俺の胸倉を掴む。
「お前、そんな弱い奴じゃ無いだろ……?」
「それとも……俺らが居ると迷惑?」
『誠、違う。迷惑なんかじゃない。』
だって、気付いてしまった。
昨日の事で。
――「悠紀仁だから、わざわざ、なんだよ?」――
いやがらせも、ここまで来たか。
誰に頼まれたか
何で俺なのか
んなこと知らねぇけど……お前らまであのとばっちり被せる訳にはいかねぇよ。
さっきだって、ロッカーにあんなもん入ってて。
「……じゃあ何で……っ!!」
親睦会前とは違い、無期限の絶縁状をいきなりたたき付けられた誠。
怒ってるのが、少し嬉しかったり。
余計に詰め寄る誠を、彰が手をかけて制した。
「……きっと、こうやって一緒にいるのが迷惑なんだよ。」
……違う。
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