極楽蝶華
イジメの王道
「……悠紀仁ロッカーの前でぼーっと何してんだ。」
『いやぁ……何か嫌な予感がするんだよね。』
勘はいいんだよ、俺。
「どら。見してみ。」
中を開けると白い封筒が一枚入っていただけだった。
『あれ……おっかしぃーなぁ……。何か黒い重い嫌な感じがしてたのに。』
「待て。」
封筒を掴もうとした俺の手を不動が遮った。
ポケットからバタフライナイフを取り出し、リングに小指を引っ掛け器用にも片手で開いて刃を出した。
刃先で引っかき上げて空中に放り投げ、ふ、とその上を刃で撫でてまたカチャカチャと片手で刃を仕舞い、ポケットに収める。
床には真っ二つに切れた封筒が落ちていた。
『……スッ…ゲェェェッ!!
今のスゲェ!!』
かっけぇぇ!!
何さらりとやってんだよ!
「それより……見ろ、これ。」
指差した先には、切られた口から覗く薄い金属片。
『……剃刀?』
「素手で掴んでたら指切ってただろうな。」
『うわぁ……何これ陰険っ!!』
今までの中で1番みみっちくて笑っちまうよ。
『俺勘良くてよかったぁ……』
痛いのはやだよね、痛いのは。
「……チッ……ウゼ……」
『俺なら平気だって。心配してくれてありがとな。』
教科書を取り出して教室に戻った。
でもさ、こーゆー事っていちいち考えてくんだよなぁ……
部屋とかで「明日はこうしてやる」みたいな。
あ、何か面白いかも。
毎度それをいじめっ子が考えてくるのかぁ……
バリエーション変えないと、とか向こうにも人知れぬ苦労があるんだね。
何馬鹿な事考えてんだ俺。
あぁ……きっと夏の曇り空の所為だ。
思考が緩慢に拡散して収拾が着かなくなる……
気怠げな湿度に細く吐き出した溜め息が溶け込んで、ゆっくりと混ざり合った。
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