[携帯モード] [URL送信]

極楽蝶華
イジメの王道



「……悠紀仁ロッカーの前でぼーっと何してんだ。」

『いやぁ……何か嫌な予感がするんだよね。』


勘はいいんだよ、俺。




「どら。見してみ。」



中を開けると白い封筒が一枚入っていただけだった。



『あれ……おっかしぃーなぁ……。何か黒い重い嫌な感じがしてたのに。』

「待て。」



封筒を掴もうとした俺の手を不動が遮った。


ポケットからバタフライナイフを取り出し、リングに小指を引っ掛け器用にも片手で開いて刃を出した。


刃先で引っかき上げて空中に放り投げ、ふ、とその上を刃で撫でてまたカチャカチャと片手で刃を仕舞い、ポケットに収める。



床には真っ二つに切れた封筒が落ちていた。


『……スッ…ゲェェェッ!!
今のスゲェ!!』


かっけぇぇ!!
何さらりとやってんだよ!


「それより……見ろ、これ。」


指差した先には、切られた口から覗く薄い金属片。



『……剃刀?』


「素手で掴んでたら指切ってただろうな。」


『うわぁ……何これ陰険っ!!』



今までの中で1番みみっちくて笑っちまうよ。



『俺勘良くてよかったぁ……』


痛いのはやだよね、痛いのは。



「……チッ……ウゼ……」


『俺なら平気だって。心配してくれてありがとな。』


教科書を取り出して教室に戻った。





でもさ、こーゆー事っていちいち考えてくんだよなぁ……

部屋とかで「明日はこうしてやる」みたいな。




あ、何か面白いかも。



毎度それをいじめっ子が考えてくるのかぁ……


バリエーション変えないと、とか向こうにも人知れぬ苦労があるんだね。






何馬鹿な事考えてんだ俺。



あぁ……きっと夏の曇り空の所為だ。


思考が緩慢に拡散して収拾が着かなくなる……




気怠げな湿度に細く吐き出した溜め息が溶け込んで、ゆっくりと混ざり合った。

[*前へ][次へ#]

99/301ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!