[携帯モード] [URL送信]

極楽蝶華
クモリゾラ
 
 
『ゴチソーサマデシタ』


手を併せて軽く頭を下げて、美味しい料理に感謝する。



「そろそろ、教室行く?」

『あぁ……もうそんな時間だね。そーぃや。』



身体を捻って斜め後ろにある掛け時計を見た。


「僕らもそろそろ教室行かなきゃかな。」

「なんだ……かったりぃ。」

「オニィチャンは毎日【かったりぃ】んだよねー。」

「なんだよ……お前だって不登校児じゃネーカ猛。」


『あぁん……俺も今日かったりぃ……』

「マジメ君ぶってるくせに堂々とサボル宣言しねぇの。」


ちぇー。
いいじゃないの不動君。



『しゃーねぇ、宿題怖いからがっこ行こー。』

「あ、悠紀仁悪ぃ数学当てられてんだけどノート見して。」

『んじゃあ不動現国のノート見せて。
坂井話しつけぇーんだよあのハゲ。』

いいじゃんね。文章から作者の心理が読み取れなくたって。



そんな他愛も無い話をしながら食堂を後にした。






……空はどんより。



一雨きそうだ。




夕立に嫌な思い出がある俺は、雷が鳴らない事を祈って校舎内に入った。


外で人目を気にしてくれてる不動を残してトイレに入り、鏡を前にカツラを被る。

眼鏡をかけようとして、ふと鏡の中の自分と目が会った。




……母親と同じ、灰色。

今日は、昨日の事もあって情緒不安定気味だし……


何も無ければいいなぁー……なんて。

そうそう揃わない条件だから、残り二つは気にしないで平気……だよな?





誰に対するでも無く、独り問い掛ける。




しん……と冷えたタイルに確信を求めた質問が跳ね返った。

[*前へ][次へ#]

98/301ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!