極楽蝶華
おにゃか減った。
ケータイと財布とカツラと眼鏡。
よし、忘れ物無し。
生活必需品を鞄に詰め込み、リビングにいた不動に声をかけて部屋を出た。
『……腹減った。』
「そうだな。」
なんたって、育ち盛りですから。
……誰だよ、「望み薄」って思ったヤツ。
人間希望を捨てたら終わりなんだからなっ!……俺は最後まで諦めないで……170cmは……っ!
……止めよ。言ってて虚しくなってきた。
「「「「キャァァァアアッ!!」」」」
Σ(゚д゚;)
……毎度の事だけど、心臓に悪い……
モッテモテダネ☆(棒読み)
「ユウちゃんこっち向いてー!!」」
ふ、と声のした方を見遣ると知らない人達が手を振っていた。
で、何と無く軽く手を挙げて愛想笑いをした。
しん、と
一瞬静まった後
「「「ギャァァァッ!!」」」
Σ(゚д゚;)!!!!
うわ、今野太い声で爆発があった。
「ヤベェェッ!!」
「……可愛いっ」
「こっち向いてぇ!!」
「ね、もっかい笑って!」
「ヤらせてぇっっ!!」
うわ、何。生徒会の人他に来てんの?
ダーリンなら一緒に朝ごはん食べよ。
「……入口がどうかした?」
『いや、生徒会の人来てんのかな、って思って。』
「……はぁ??何で?」
『何でって、聞こえないのかこの大歓声。』
Backguround Music に耳を傾ければ……
【抱かせてぇー!!】
【な、こっち向いて!】
【可愛い、ヤバイっ!!】
【一回ヤらしてぇっ!!】
【あ、俺も俺も!!】
いや、すげぇなー情緒も糞もねぇ若さの暴走。
男子高校生のさえずり。
いや、さえずって無いよね。叫びだよね。
「……で?」
『だっから、わかんねぇヤツだなぁー……
こんな騒がれてるんだから、さぞかし顔が良い=生徒会の人かなんか だろーが。』
「……はぁ??」
口をだらん、と開けたまま呆然とする不動。
「……お前、野次飛ばしてくる奴らの目線を追ってみろ。」
何よ。いきなり。
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