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極楽蝶華
答えなんて決まってる
 


「今……夢見て、昼の事……思いだしちま、って、…………」



いきなり黙りこくった悠紀仁が心配になって顔を覗き込んだ。

『……悠紀仁?』



「……うぁ、う……うぅっ、う……〜〜っ!」

身体が跳ね、首に腕を回してキツク抱き着いてくる。


肩が何回かビクン、ビクンと跳ねるように波打ち、
それを抑える様に、急くような自分の気持ちを抑えるように抱きしめた。


「っ……不動、」


『いるよ。ここに。
だから……大丈夫だから……っ!!』



「俺……今、全部思い出して……
全部夢に出て……」



俺の首から腕を外して、自分の身体に爪を立てる。



「触られた感触とか、舐められた場所とか……全部、全部……っ!!」


『もう、平気だから。
なあ、悠紀仁……泣くなよ……。』


あぁ、ダメだ、何で俺は分からないんだよ


……悠紀仁、お前にかける言葉が
何て言ったら少しでもお前の気が楽になるのかわからない。



「……俺、お前に……甘えていいかな。」

突然、声を落とした悠紀仁がぽつりと呟いた。



『……もちろん、決まってんだろ。』


 

「……お前に、俺、サイテーな事頼むけど……いいかなぁ?」


辛そうに寄せられた眉根。

無色に近い長い睫毛で縁取られた大きな瞳からは、耐える事なく滴る大粒の涙。



『……いいよ。
お前がそれで少しでも楽になるなら、何だってする。』


お前が泣き止むなら。

きっと俺は、今、犯人を殺して、と言われてもそれを叶えてしまうだろう。

そのくらい、
好きな奴が泣いてんのはキツかった。

悠紀仁がそれを忘れて、笑ってくれるなら、本当に何だってする。




悠紀仁が、爪を立てるのを止めて、着ていた長袖のカットソーを脱ぎ捨てた。




目の前に現れる、真っ白な陶磁器のような肌。

鮮やかに散る、体中の紅い華。



両胸の飾りは鬱血で真っ赤に腫れ上がっていた。




「今日……俺が、された事……
全部、感触まで覚えてて……目を閉じると思いだしちまうんだよ。」




濡れそぼった瞳が俺を捉えて……魅き込まれた。



「不動……お前が……


……上から、同じ事上塗りしてくんねぇかな……?」




ゆっくりと瞼が閉じて、また一筋頬に流れていった。




「……目隠しされて……
色んな場所触られて、舐められて、

……それが、目を閉じる度……思い出して……。」



肩を強く掴んだ爪の下に、緩く弧を描いた紅い印が五つ出来た。



「お前が……

…………消して……?」






答えなんて、決まってんじゃねぇか。


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