極楽蝶華
3
「ぎゅう、って。
抱きしめててくんねぇ?」
「俺、今日はかなりの寂しがりみたいなんだけど。」
小さく、笑う声が聞こえた
瞬間、華奢な身体を思い切りかき抱いていた。
「ふどっ……、ごめ……」
『今日はずっとこうしててやるから。』
腕の中の細い体躯が
小さく跳ねて
俺が背中や頭を撫でるたび
強張った全身の力が少しずつ抜けていった。
何されたかなんて
聞かなくても分かるよ。
お前を助けらんなかった自分がスゲェ情け無い。
親睦会の事とか関係無しにずっと一緒に居れば良かった。
ゴメン。悔しいわ俺。
お前を守れなかった。
「……不動。」
『何だ?』
自分を見上げる
二つの淡い灰色。
「ベッドな、お前の匂いがする。
……なんか、落ち着くわ。」
『……匂い?』
「お前の吸ってる煙草の匂い。……強いガラナの。」
目がそっと閉じられて、間もなく規則的な寝息が聞こえて来た。
……煙草臭ぇ、っつって怒ってたのにな。
いつの間にか俺の匂い……か。
紅く熱を持った瞼に口付け、自分も目を閉じた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!