極楽蝶華
2
そろそろ落ち着いたらしい悠紀仁が、ゆっくりと顔を上げた。
『……もう寝るか。』
「うん……」
電気を消そうと手を延ばして、血相を変えた悠紀仁に飛び付かれる。
『わっ……と。何だ?』
「ごめん……今夜は、点けたまま寝ていいか?」
唇が微かに震えて語尾が揺らぐ
俺の中で、最悪の予想がいよいよ確定して目の前が真っ暗になった。
ヤバイ、泣きそうだ……
『……あぁ。』
無理矢理涙腺を押しとどめて、俺が気付いていると悠紀仁に気取られないように……声が震えるのをなんとかごまかせた。
部屋ん中歩くときに体に触るのが嫌で、敢えて短くしてある紐を掴んで、1回だけ引っ張る。
少しだけ明かりを失った部屋の中をベッドに戻った。
出しっぱなしだった雑誌類をまとめて床に落とし、煙草の匂いの染みついたシーツの上に横になる。
ガンガンにかけてるクーラーを避けるように薄い羽毛を引っ掴む悠紀仁。
横向きに寝る俺の胸の中に寄って来て、ぴったりくっついて片手を首にかけて来た。
『……!』
鎖骨の辺りに顔を埋めて、まだ震える腕で俺の胸元を掴んでいる。
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