極楽蝶華
頼むから、
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―ゴンゴン―
『……開いてる。』
キイ、と扉が遠慮がちに開いた音が聞こえた。
雑誌から顔を上げると、目を真っ赤にした悠紀仁が震えながら立っていて。
『?!!……どうした?』
ベッドに座る俺の隣に腰掛けると、腕を回してぎゅうっ……としがみついて来る。
鼻にかかった声が、俺の芯に響いた。
「なぁ……俺、今日こっちで寝ていい?」
『……どうしたんだ?』
顔を埋める悠紀仁を抱きしめると、こちらに伝わるくらい震えてるのが分かる。
「な……んかさ、俺今日人に甘えてぇみたいだわ。
……付き合ってくんねぇ?」
『良いに決まってんだろ……』
ガタガタ震える悠紀仁の腕は、指先が白くなる程キツク握り絞められていて
俯いてる耳は真っ赤で、恐らく泣いてるんだろう。
「……俺、『言わなくていい。』」
『……いいから。
でも、ツライならいつでもいい。言って楽になるなら、聞かせろ。』
「……わりぃ……さんきゅな……」
頭を撫でると、俺のパーカーを掴んでた指は一層強く食い込んで
噛み締めた様な唇から小さい鳴咽が漏れて来た。
……誰が、何をしたか。
今すぐ聞き出してソイツをブッ殺しに行きてぇよ。
……でも、今のお前から聞いたり出来ねぇよ。
それまで待つから。
それまで、こうしててやるから。
頼むから泣くな。
俺、お前に泣かれるとスッゲェ弱いわ。
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