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極楽蝶華
お前は、聞かないのな。
「……ほいポカリ。」


渡されたペットボトルの口を捻って中にある半透明の液体を見下ろした。



『……さんきゅ……。』



冷たい液体が流れ込んで、自分の食道の形が一直線に浮かび上がる。
背中に張り付く汗がすこしずつ退いていく行くのを感じた。



「ホントに何でもねぇんだな?」


『うん。……何でもない。』



騙すのは気が引けたが、自分の友達にこんな事知られたく無かったから。



奈緒先輩には……話したが、それとは別にただ純粋に知られたくない。





薬を使われた、とは言え……強要された行為に快感を見出だしてしまっていた自分に気付き、深く自己嫌悪に陥っていたから。



汚れた気がして。





「なら……もう聞かねぇよ。」



ふ、と寂しそうな顔をして自室に戻って行ってしまった。




……俺ももう寝よう……




ソファから腰を上げ、自分の部屋に戻りスウェットを着込んで、細く息を吐いた。





天井から垂れ下がった紐を引っ張って、周囲が闇に支配されると……







働かない視界に恐怖を覚え、身震いをした。




そのままここにいたら、黒から伸びる手に搦め取られてしまいそうで……


急いで電気を点け、自分の身体を抱え込んで……その場に足から崩れて、床の上で身を小さく屈めた。




『……んで?』





『……なんで、俺だった訳……?』






自分の肩を掴む手と、声が、小刻みに震えた。

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あきゅろす。
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