極楽蝶華
部屋に帰宅
バタン、と。
部屋に入ってやっと下ろして貰えた。
ケータイを取り出した不動が何処かに電話をかける。
「……あ、もしもし久遠先輩。悠紀仁見つかりました。」
奈緒先輩?
「……今?
部屋ですよ。……それじゃ。せいぜい悔しがって下さい。」
―ピッ―
『……何で勝ち誇ってるの?』
「先輩が悔しがってたから。」
意味分からんわ。俺は、その悔しがる理由が聞きたいんだけど。
ま いいや。
『何で俺の事探してたん?』
「さっきいきなり久遠先輩が来てな。
帰って来てないっつったら【悠紀仁が食われる】って言われて。探してた。」
『……食う?』
「気にすんなよ。」
ポンポンと頭を叩かれた。
またしても意味不ワード出現。
「それよりさ、……何で奈緒先輩の部屋で風呂入ったんだ?」
『ちっと……身体が汚れてね。』
嫌な事を
思い出して
上手く笑いが作れなかった
いきなり真剣な目で真正面から顔を覗かれ、肩を強く掴まれた。
「……正直に言え。
久遠先輩に何された?」
『奈緒先輩……?
何もされてないよ?』
「……本当か?」
『本当だよ。』
それどころか
奈緒先輩は、
俺の事ぎゅう、てしてくれて。
「じゃあ……これ何だよ。」
ワイシャツの衿ぐり引っ張られて、右肩まであらわになった。
『……!!』
自分から見えるだけでも、3つある紅い鬱血。
途端、息も出来ないほど心臓が大きく跳ねた。
身体が崩れる。
「!……悠紀仁?!」
不動が伸ばしてくれた腕の中に、倒れ込んだ。
……あったかい……
「……悠紀仁?」
『わり……もちっと、このまま……』
人の体温を感じると
浅い呼吸が、震えが、
少しずつ遠退いて行く、から。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!