極楽蝶華
風呂、ちょっとのぼせた
若干のぼせ気味に、焦点の定まらない視界で着替えを着込んだ。
うーん、イマイチ意識がはっきりしない。
「ホラ……悠紀仁。ワイシャツ、ボタン一個ズレてる。」
既に着替え終えてる奈緒先輩が、まるで幼い子供を相手にするかの様に手際良く服を着せていってくれる。
『……んン。』
その手元を虚ろな目でぼー、っと見つめていた。
ら。
「悠紀仁!!」
『は、ははぃっ!!』
いきなり、顔を両手で挟み込まれて大きめの声を出され、一気に意識が覚醒した。
「……そんな顔してちゃダメ。」
『……はぁ??』
「返事は?!」
『は……い分かりました。』
迫力負けして思わず頷いてしまった。
なんのこっちゃねん。
「……ったく。それなら脱がされても文句なんか言えないんだからね?」
と
何かブツブツ言っていた。
奈緒先輩に借りた着替えはサイズが少し大きくて。
下にショートパンツ(ホントに短い。太腿の半分無い)履いてるけど、上に着てるワイシャツ(長袖)が大きいのでぱっと見これ一枚に見える。
袖なんか、指が出るか出ないかの長さだ。
ま、借りといて文句は言いませんがね。
それから、自分で出来ると言ったのに髪をドライヤーで乾かされ
ひざ抱っこでアイスをあーん、てされた。
いや、アイス美味かったからいいけど。
ハーゲンダッ〇の抹茶、俺好きなんだよね。
『……そーいえば奈緒先輩は誰に抱きしめてもらったんですか?』
笑顔がぴく、っと引き攣った。
「……あの双子。」
……へ、へぇー。
何だ。気を遣うような優しいとこあるんだ。
向きを変えて奈緒先輩に向き合い、胸に顔を埋めた。
「……悠紀仁?」
『……俺は奈緒先輩より背ぇちっちゃいけどね、これからは俺も奈緒先輩の事抱きしめてあげる。』
俺の背中に手が回った。
「うん……して?」
『うん。いっぱい。』
下から顔を覗き上げて、にへぇー、っと笑う。
途端奈緒先輩が顔を赤くして口元を押さえ、何か呟いた。
「……ヤバァッ……」
『?何ですか?』
「ううん……何でもない。
それより腕、もっとキツクして?」
お風呂上がりのイイ匂いが
俺達の間で混じり合っていて、なんだかほっとした。
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