[携帯モード] [URL送信]

極楽蝶華
ぎゅう、して?
 



さっきされた事がひとつひとつリアルな感触を伴って脳内に細切れにフラッシュバックした。



その度にびくんびくん跳ねる背中を、奈緒先輩はずっと撫でててくれて。



俊もりょーちゃんも何も言わず、ソファに座って話を聞いてくれてる。



いっこいっこ話す度、嫌な感触が消えていくような。



それでもすごい心細くなって、背中に嫌な汗が流れて怖くて仕方なかった。



『奈緒…先輩………』


しゃくり上げる俺の目元に、柔らかい唇がくっついて流れてる涙を拭う。


ちゅ、ちゅ、と音が立って耳に響いた。


「何?」



『っ俺、……怖い……っ。
ずっと縛られてて、視界も奪われて、こうしてるだけで怖くて……泣きそうになる。』



「うん。」


撫でる手は気持ちいいけど


『……俺の事、いつもみたいに膝に乗っけて。
背中から腕回して、他何にも考えらんなくなるくらい、ぎゅうってしてよ……』



ちっちゃい子になったみたいに、今スゴイ誰かに甘えたかった。



「なら俺んとこ来い。」


横から伸びた手に、脇から抱え上げられて胡座をかいた俊の膝の上に落とされる。



かなりの身長差のせいで後ろからすっぽり包まれた。


「……何してんだよ。」


「俺の方が背がデカイ。力も強い。悠紀仁が余計なこと考えられなくなるくらい、キツク抱きしめてやれる。」



確かに、大きな胸板が暖かくて心地良かった。



「……悠紀仁は僕に言ってただろ?」



抱き着くの好きなのかな、て。思ったり。



『……奈緒先輩、は……前から抱き着いていいですか?』


「ホラ、離せ俊。」


『違う。……このまま。』


「……え?」



『どっちか片方じゃやだ……。2人がいい。
2人に抱きしめてもらいたい。……ダメ?』






『……今だけでいいから、俺、2人に甘えていい?』



肌とかに残る野村の感触が気持ち悪くて。

ねぇ、消して欲しいんだ。

[*前へ][次へ#]

51/301ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!