極楽蝶華
ピッキング……
ちなみに、ドアを開けるときカードキー通すのに俺を片腕で支えたんですが。
いや、逞しいよね。うん。
羨ましい限りだよ。
でもね。
あんまり動かすから中擦れて涙出てきたじゃねぇか。
「……何泣いてんだよ。」
じゃあお前根本縛られて薬飲んでみろ。
つぅかさ、人の泣き顔見んなよ。
『……見んなよぉ……』
泣き顔をよぉ。わざわざテメェ。
「ヤダ。見てぇ。」
こんのぉっ……
……暴君がぁぁぁああっ!!
顔を覗き込まれたまま、ソファに下ろされて頭を撫でられた。
「ちょっと待ってろな。」
俊の言葉もどこかBGM。
俺今スゴイ頑張ってるよ?
近年稀に見る我慢だよ?
どっかに行ったと思ったら、俊が何か細い棒の束を持って帰って来た。
針金を口に銜えてグニグニ曲げている。
他にも、持ち手の付いた細いかぎ針をいくつか選んで俺の後ろでなんかガチャガチャやってると思ったら。
―カチン―
『……何で開くんだよ。鍵。』
長いこと後ろで括られてたので、関節が固まってギシギシ言っていた。
久々解放された両手に、感触を確かめるようにこわばっていた指を恐る恐る曲げ伸ばしした。
「社会教養だよ。」
ぜってぇ違う。
ピッキングだろ、これ。オイ。
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