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極楽蝶華
怖いよ……ッ
 
 


視界を奪われる、というのがこんなに怖い事だと知らなかった。


耳に、ケータイのマナーモードみたいな音が響く。

中に突っ込まれたモンが暴れる度、俺の口からは上擦った声が漏れて



まるで自分が自分でなくなる様な感覚に、脳みそが溶けてんじゃねぇかと思った。

その溶けた部分に緩く響く振動音は、少しずつ、だけど確実に俺の神経を蝕んでいく。







麻痺した頭に、糸が切れてボタンが飛ぶ音が入って来た。


……あー……

誰だよ。また縫わなきゃ。


いきなり、唇を舐められた


『?!』



知らない感触に、身がすくむ。



今、俺の耳元でなんだかよく分かんなく「何処が好きだ」トカほざいてる声の持ち主、知らない……


不動のじゃ無い。

誰だよ。



鎖骨を舐め上げる舌も、ただヌラヌラしていて……ざらざらしたくすぐったいソレでは無くて。

レオのじゃ無い。
知らない。

首筋を舐め回す舌は、気持ち悪いだけだった。


胸の辺りを執拗に触ってくる手の平も、指も。
優しく撫で回す、心地良いモノでは無くて

奈緒先輩と違う。


手が、下に下りて爆発出来ない俺の分身を揉みしだいた。


後頭部に回された腕も、ただ鷲掴むだけで金具が頭に食い込んで、プチプチと髪の毛が切れる音がして……

包み込む様に大きな、猛さんの手じゃ無い。


この空気が、この空間に蔓延するねっとりとした重い気が肺から何から俺の事じわじわ追い詰める。

……隆也さん、に、……撫でて欲しいな。頭。


拘束具を銜えた俺の唇に口付けて、吸ってくる粘膜にはモチロンボディピアスなんて付いてなくて


不快感しか残さない。

息も出来ない様な、俊の乱暴で優しいキスでは無かった。







『いっ……ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙っ!!』





奪われた視界の中、まだよく動かない足で思い切り上に被さる人物を蹴り飛ばした。




怖い、怖い、怖いっ……!!




自分もその反動でソファから転がり落ちて、頭を打ち付けた。


そんなことに構っていられず、走り出そうとして膝まで下がっているズボンに足を取られて転び、その拍子に倒れかかった先の壁が横にスライドした。



……ドア、だっ!



必死に身をよじり、身体でドアを開けて何とか上半身を廊下に出す。

顔に直接くっつく廊下の床材に、取り敢えず逃れられた事に安堵が浮かんだ。

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