極楽蝶華 俺の事も、叱って…… □■□■□■□■□■□■ 「あれ?俊は?」 『……会長ならさっきそのまま出てっちまったよ。』 扉を顎でしゃくるとき、左頬を冷やす春日が目に入った。 席を立って部屋に行こうとすると、奥の部屋からユウが出て来て。 『……っえ??』 「……俊、ホントにどうしたんだ?」 何でそいつの事心配すんの? 「やっぱ、俺なんかやったのかな……」 何で会長の事でユウが悲しそうな顔すんの? ユウ、俺まだ二人っきりであなたに謝ってないのに。 『ユウ……っ』 「なに?」 考え事してるのか、軽い調子で返された返事に胸が苦しくなった。 「え……?! レオ、何で泣いてんだよ?」 だって、お風呂から出て来たら叱ってくれるって言ったのに。 いっぱい、怒ってくれるって。 いつものユウと接点を見つけて、嬉しかったのに。 午前中に振り払われた感触が、まだ手に残っているから、まだ、スゴイ怖くて…… 俺の、ごめんなさいも 聞いてよ……。 「馬鹿。何でお前が泣くんだよ。」 前屈みに垂れた頭に懐かしい感触があった。 髪を梳く様に撫でるユウの手。 『だっ……て、俺の事、叱ってくれるって…… ユウが、忘れたからぁっ……』 「あぁもう。んな事で。」 俺の膝の上に座ったユウが、ぎゅう、って抱きしめてくれる。 『ご……ごめんなさぃっ……』 自分も腕を回して、ユウの胸に顔を埋めた。 『嘘ついてごめんなさぃっ』 「……怒ってねぇよ。」 喉に、手がかかる。 指先がふにふに、と柔らかく動いて首筋を撫でた。 いつもの、ユウだ。 途端、緊張が解けた。 顔を上げてユウと向き合う 『ぅあ゙っ、俺、ユウに嫌われた……って思ってぇ……ごめんなさぃ……』 「……馬鹿。お前らに嫌われた思ったの俺の方だ。」 「あんな嘘つかれて……」 [*前へ][次へ#] [戻る] |