極楽蝶華
「……大嫌いだ。」
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今言われた言葉が頭の中に響いていた。
「……大嫌いだ。」
自分の手足が冷えていくのが分かる。
驚くくらい、冷たくなっていく四肢。
それに反して心臓だけは苦しいほどの爆音を伴って、暴れる。
息も、出来ないくらいに胸が痛くて。
立ち尽くしたまま、何も考えられなかった。
「久遠君、何かあったのかな?」
いつの間にか教室に入って来てた担任が馴れ馴れしく肩に手を置いた。
微妙に撫でさするみてぇに蠢く手が、気持ち悪い。
いつもにこにこしてやってるからって、気があるとか勘違いすんじゃねぇ。
媚びてるんじゃなくて利用されてるんだよ、お前。
―パシッ―
ほとんど無意識に手を振り払っていた。
『気安く触るな。』
未だ現状の把握が出来ていない。頭が痛かった。
『HRは出ない。帰るから。』
……あの子を、
悠紀仁を、
探さなきゃ。
「久遠君……私を困らせないでくれよ。」
まるで親しい仲の様に、
「いつもは素直だろう」
を匂わせる言葉。
『急用が出来た。』
「君らしく無いね。どうしたんだ?」
『腕を離せ。』
いつも、無遠慮に触れてくる手。
『……急用が、出来たんだ。』
整髪料の匂いに、胸がムカムカした。
空気中に充満する粒子から逃れる様に、教室を出た。
はやく。
君に会いたい。
会わなくちゃ、いけないのに……
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