極楽蝶華 居ませんように。 一応、覗いておこうと(逃げ腰で)歩きだした。 「藤堂君。」 呼び止められて横を見る、と 『あ……』 久遠先輩の手に俺の黒ぶち眼鏡。 眼鏡忘れてた。元々かけてなかったから存在がいまいち薄いんだよな…… 「こっち向いて」 久遠先輩が眼鏡をかけてくれ…… -チュッ- キスをされた。 ハァ━━(゚Д゚)━━?? 今「無理矢理しない」っつったばかりじゃねぇーかよ!! 歯の根も乾かないうちに ハァ━━(゚Д゚)━━?? 『何するん「お礼、貰ったよ。」』 あー眼鏡気付いてくれてありがとうございますね。 ……よく考えたら払いすぎだ釣りよこせ。 ……あ、でももし琉崎がいた場合バレる色濃厚だからその点では命の恩人、かな? まぁいいやスキンシップが好きなんだろ、この人。 別に心底嫌って訳じゃ無いから……まぁ、いいか。悠臣と似た匂いがするし。悠臣が増えたと思えば……思えば…… ………ちょっと嫌だ。 それよりも、目下の問題は ……この、天井まで届く重くてデカイ扉。その向こうに何が待ち受けいるかといことだった。 磨き上げられた金の取っ手を標準より幾ばくか細い久遠先輩の指が掴む。くぐもった金属音と共に生徒会室の扉がゆっくりと開いていく ふと思いついた。 琉崎はもういないんじゃないか。あの男の事だ。こんな取るに足らないやつの話を聞くのに1時間以上待ち合わせ場所にいるとは思えない。 むしろ当然のように遅刻してくるとか、待ち合わせ場所に来た時相手がいなかったら1秒と待たず即帰る、とかやらかしそうだ。 いないことを確認して帰ろうとしたら…… 黒い皮張りの椅子に踏ん反り返り、高そうなでかい机に長い脚投げ出して不機嫌オーラ全開な魔王様がいらっしゃいました。 ……おうちかえりたい……ッツ!! とりあえず「座って待ってて」って言って奈緒先輩が給湯室に消えたので、部屋の隅の応接セットみたいなのに座ってみた。 ……藤堂の家にもこんなのがあったが……今までの人生の中で関わることの無かった革張りの高そうなソファに身が萎縮。 [*前へ][次へ#] [戻る] |