極楽蝶華
今だけ
そのまま暫く二言三言交わしながら何と無く点けてあるテレビから流れる深夜番組を見続けた。
こんな事がしたいんじゃなくて、無言でただ横にいるんじゃなくて
もっと、したい事があったのに。
聞きたいことや、話したいことも。
『何か飲むか?』
そう言って横を向くとソファにもたれ掛かって寝息を立てていた。
『今、俺の横で寝るか?……普通。』
でもまぁ、俺の横で居眠りこくくれぇ安心してる、って事実が……嬉しい。
自然と笑みが浮かんで、なんかあったけぇもんを感じた。
そういえばもう3時になるんだな。
……俺もそろそろ寝よ。
軽い、軽い……華奢な身体を抱き上げて寝室に向かった。
ユウを横たえた傍らに自分も寝転がる。
持ち上げた頭の下に腕を滑り込ませ、間近で寝顔を眺めた。
「……ん」
髪の毛に口付けた際、軽く漏れた声に下半身直撃で疼きが襲って来た。
……が、我慢しとけ。俺。
ここで押し倒したら、確実に嫌われる。
テンションを下げる為に貯めっぱなしの生徒会執務を思い浮かべ、枕元にあるスイッチで部屋の照明を落として自分も目を閉じた。
腕の中の温もりが、堪らなく愛おしい。
まだ自分のじゃないし、俺の他にこいつに触れたヤツもいる。
そんな事も頭を過ぎったけど、細い身体を抱きしめて、顔のラインに手を這わせて……暗闇の中、カーテンの隙間から漏れ差し込んでくる月光に
手探りで
まだ、塞がらない噛み傷を見て。
唇を押し付けた。
とりあえず幸福感に酔っておいた。
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