極楽蝶華
風呂上がり
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テレビではくだらない深夜番組がやっていて、司会進行役のアシスタントらしい女の鼻に掛かった声がやけに耳についてイライラした。
あの、透明で玲瓏とした綺麗な声が聞きたい。
部屋のリビングで、ビール缶を傾けながら壁にかけてある時計を見上げた。
……長い。
ユウが風呂に入ってからもう40分になる。
誘って普通に部屋までついて来たから物凄く焦ったが……
談話室で喋ってた時も思ったが、自覚が無いんだな。
……あの外見で、天然……で、無意識にあんなに可愛い。
たちが悪いな……。
―ヂャガッ―
「……あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙〜!!!
広かったぁー。風呂ー。ヤッベー良いなぁー。」
俺の葛藤の主が風呂から出てきた。
『……っな、おまっ……!!う、え…何か、着ろっ!!』
何も身につけていない上半身に……慌てて目を逸らした。
細長い四肢と滑りの良さそうな肌と、隠そうともしない胸の紅い飾りに性の匂いしか感じないのは……受け取ってる俺に問題があるのだろうか。
「風呂上がりなんて暑くて服着てらんねぇーよ。それより話って何??」
テレビに目を遣ってから、俺に視線を移して……隣に腰を下ろした。
…………っ!!
うなじに張り付く銀髪が……
理性が飛びそうなくらいにエロい。
体中が桜色に火照っていて、上気した顔も濡れた髪も全部が今すぐ……欲しい。
『……お前に……随分、ヒデェ事しちまって……悪かった。それが、言いたくて……』
目の前の淡灰色の瞳が驚いたように見開かれた。
『怪我の事も……噴水での事も、ホント、ごめん。
……謝って済む事じゃ無いけど……悪かったよ。』
顔を上げるとユウが困ったような、迷っているような微妙な表情をしていた。
『ユウ……?』
心臓が早鐘の様に鳴って
頭まで響いた。
「……あのさ。」
『な、に……?』
握った手が汗ばんで、力を込めすぎた指先が手の平へ食い込んだ。
「喧嘩なんて……どっちも悪いんだし、
まぁ確かにそれが原因でしばらく寝込んだりもしたけど……」
「……その顔、止めろよ……。なんか、怒れなくなっちゃうじゃん。」
少し困ったような顔をしてこちらを見上げてくる、ユウ。
……その顔、可愛い。
『悪い……。ほんとに、あそこまでするつもりは無かった……から……。』
「だから、もういいって。お前と喧嘩すんの結構楽しかったし。」
『……どうして?』
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