[携帯モード] [URL送信]

極楽蝶華

 


『……あぁ、大丈夫。そう言うのじゃねーから。』

「そ?ならいーけど。」



俺は……悠紀仁がいる時は自分を繕えない。平気なフリって演技も無理だし、イレギュラーが起きたときの俺の態度が、言動が、毎回……片想いに気付かないアイツに行ってしまう。

だから、


『……こうやって皆で騒ぐのも楽しいけど、最近お前と2人でゆっくりしてねぇな、って思って。』




鈍感なウサギが戸惑わない程度に、噛み砕いた言葉でお前の事を口説いてく。
溜め込まない、ストレートに、素直に
その度に。……本音で。

ヤキモチなんか妬いて、立ち止まって悠紀仁がこっち向いてくれんの待ってたらいつまで経ってもお前の事を幸せになんか出来そうにないから。



身勝手な失恋、は……するつもりはない。
久遠先輩の言葉がきっかけになったのはシャクだけど、俺は自分の器の小ささを隠せないなりに立ち振舞うしかねぇって、腹決まったし。



「なんだ……お前、相変わらず人混み苦手なんだな。」

『大勢が嫌って訳じゃなくて、お前と2人が好きなんだよ。』

「……寂しがり。お前も甘えんのかよー」


少し照れたようににへ、と笑った悠紀仁が俺の頭に手を伸ばしてそこを撫でる。

真意に気付かなくても……今は構わねぇよ。
1番大事な核心には触れられないヘタレだけど、チキンにはチキンなりの攻め方がある。

お前が鈍感なのも、お前を甘やかせる立場も、お前に甘えられる立場も最大限利用させてもらうから。



……恋愛に疎いのはわかってる。
惚れろなんて贅沢言わねーから、お前の日常の半分俺で埋めろ。


それまで地道にこうやって、「俺はお前なしじゃ生きられない」って 解るまで言い続けるから。

[*前へ][次へ#]

146/191ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!