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極楽蝶華
drink
 




「……それは私の飲みかけなので返してもらえますか。」


悠紀仁を中心にまた喧騒が広がるテーブルから、再度視線を村上に向けた。

また何かさっきの延長でややこしいことになってるのかと思ったが、どうやら違うらしい。口論の相手だった人は言い様のない「こいつヤバイ」感にすっかり口数が少なくなっていた。



『何やってんの、透。』


村上が呆れたように声をかけた相手は、兄弟の中で一番好奇心旺盛でマイペースな末っ子。

村上の座っている椅子の後ろから身体と腕を伸ばして、人の飲みかけらしいグラスに鼻先を突っ込んでフンフンと臭いを嗅いでいる。



「いや……酒、飲んでんのかと思って。」

『あぁ……なるほど。』


確かに正気かどうか疑いたくなる気持ちはわかるけど。


「何を馬鹿なことを……学校に戻ったら仕事が残っているのに飲むわけがないでしょう。」


やれやれ、といった感じに、グラスを取り返した村上が自分の後ろから乗り出す透を見上げて小馬鹿にするように言い放った。


「いや……さっきの発言も、正直気持ち悪すぎてドン引きしましたけど……」

「何の事ですか。」

「悠紀仁さんへの賛辞が1回もつまることなくあの量がスラスラ出てくる崇拝っぷりと、自覚のなさが。
いや……まぁそれより、村上さんお酒飲むんですか?」


僕もそこが引っ掛かった。さっきの発言では、「今は飲むべきじゃないから飲まない」「状況によっては飲む」としか聞こえなかった。
……この、見た通りの村上が、未成年飲酒?
こいつがいつも口煩く注意する校則どころか、法律に違反して……いや、まぁ僕も飲むけど。生徒会の仕事終わりとか、いい気分のとき。



「名誉にも悠紀仁様にお仕えさせていただいている者として、いつも感じている事を言葉にしただけです。
まぁわざわざ言わなくても分かるような当然の事しか言っていませんがね。」

「……内容と言い方がかなりアブノーマル臭いとか何で気付かな……
いや、そうじゃなくて、酒、」
「飲みますよ?」



ごく普通に、そう言い切った村上に今度こそ透が目を見開いた。

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