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極楽蝶華
村上の「素」
 






学校から来た人間と、チームの人達と、入り交じって宴は結構な盛り上がりを見せる。

意外にも村上でさえ、話の輪に入ってるようだった。
何話してるんだろう……あいつ悠紀仁以外に興味すら持たないのに。



「……俺らは納得、いかねーんですけど?
運がいいだけじゃんアンタ。家がそうだったってだけで、ユウさんの近くにいるのズルくない?」

「ではあなたは、私よりも悠紀仁様の隣に立つのに相応しい人間であると?いったいどのような点においてですか?」


……話が弾んでる、んじゃなくて口論しているだけのようだった。
村上が(僕が見る限り)普段と表情が変わらないから、ごく普通の会話をしてると思ってちょっと聞き耳を立てたらこれだよ……


自己紹介、の延長で悠紀仁と自分の関係でも喋ったのかな?
まぁ確かに、僕らの周りでもこのくらいの年で御付きの人間がいるのは珍しいし。


僕だって……村上の立場が羨ましくない、と言うのは嘘になる。夏休みだって……同じ敷地内に家があるし、何より将来同じ職場で秘書と主人として一緒に過ごせるなんて。
……羨ましくないわけ、ないじゃないか。

でも、僕は……人の境遇を妬んで、恨み言と泣き言漏らすだけの馬鹿は嫌いだ。


「……俺、お前よりケンカつぇーし。」

「悠紀仁様に勝てないのに?それでは守ることは出来ないのではないでしょうか。」

「っ!!……そう言うテメェはどうなんだよ、お坊っちゃんっ。」

「声を……小さくしてください。自分の友人が口論をしていると悠紀仁様が気付いたら悲しまれます。
それに私は……少なくともあなたには負けないと思いますよ。」

「てんめぇ……?!」


挑発された相手が村上の胸ぐらに手を伸ばした刹那。
それを横から正確に、左手で親指だけを掴んでテーブルの下に引きずり込んだ。
捻りを加えながら引き込んだ、その素早い動きに手を振り払うことも出来なかったらしく――村上に喧嘩を仕掛けた男は、テーブルの下で捻り上げられた親指1本に悶絶する羽目になった。


「ぐぁっ、う、」

「しー……ダメでしょう。悠紀仁様が心配されてしまう。」

思わず悲鳴をあげそうになった男の口を手のひらで塞いで、何とも理不尽な要求を押し付ける。


悲鳴の原因はお前じゃないか、村上。




まだ やりますか?


村上の唇が、男の耳元でそう動いて
抵抗を諦めたことを感じ取ったのか、村上は無表情のまま手を離して不機嫌そうな顔をした男を解放した。

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