極楽蝶華
初体験
その後全員が高校生(透は中学生)だと、改めてびっくりされた所で食事の用意が再開された。
大人数のせいで全員が椅子には座りきれず、ソファの背もたれに腰掛ける者や立ったままカウンターで食事をする者も出て、半ば立食形式のパーティーのような様相を醸し出してきた。
騒々しい空気の中、各テーブル毎で種類の違う大皿の料理を取るついでに悠紀仁の事以外にも色々な話をして……僕が想像してたより、楽しい時間だった。
年下だからって初対面だけどタメ口で接してくれて、
第一声が「お父様はどちらで?」じゃなくて
サーブする人間のいない大皿から、自分でトングや取り箸使って取り分けて
「久遠くんは将来何になりたいとかある?」
流れで、そんな話を振られた時
『……僕は、家業継がなきゃならないので。』
「あー、そうなんだ。自営業の息子は辛いよなー。
俺も親父の工場継がなきゃなんないんだよ。」
将来が約束されてて羨ましい
これ以外、言われたことなかったから。
そっか、自分の職業が既に決められてることを、辛いと言ってもいいのか。
同年代の人にそんな事言われたのが初めてで、これ以上どう処理して良いのか分からなくなって
『……そう、ですね。』
何故か言葉につまって、曖昧に笑うしか出来なかった。
どう言葉に表して良いかわからないこの重りみたいなモヤモヤが、胸に引っ掛かる。
何でだろう、嬉しいのは。
悠紀仁と、一緒に外に出掛ける。その付随物だと思ってたんだけど。
……普通の人ってこうやって友達作るのかな。
それにしても、何でみんなこんなに良い人達ばかりなんだろう。
……僕も、普通の家に生まれて普通に悠紀仁の友達になれたら良かったな。
初対面から怖がらせて、泣かせちゃうんじゃなくて。
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