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極楽蝶華





智則さんが駐車場から戻ってきてすぐ、またスチールの扉がその身を軋ませながら新しい来訪者を迎え入れた。
会話を続けながら視線だけ向けて、入り口の方を見るとどうやら僕らより少し後ろを走っていた鈴峰達も到着したらしく、運転手より先に3人が入ってきた所だった。


カウンターでノートパソコンを広げていた澤村がそれに気付いて片手を上げる。見知らぬ人達の中、見知った顔を見付けた3人が無意識ながら安堵の表情を浮かべて席へと着いた。


それを最後まで見届けて、僕は視線を会話途中だった話し相手へと不自然にならないように戻す。



『へぇ……じゃあホントに悠紀仁はここのチームの総長やってるんですね。
人気票じゃなくて。』


「まぁ人気でもユウさんがダントツですけどねっ!
幹部は全員総長より年上ですけど、今チームの中であの人に勝てるヤツいないんで、代替わりはまだ先ですね。」



他のチームの事情は知らないが、どうやらここでは「総長」のポジションは実力主義らしい。
 立候補して、現トップを倒せたらその人が新しい総長となる。……そのシステムのせいで悠紀仁の前の代は、大学の卒業間近まで6年も総長のポジションを務めることになったそうだ。


……しかも結局その人には、悠紀仁は一度も勝てた事が無かったと。ただしそれは相手も、悠紀仁に勝った事は無かった。何度手合わせしてもお互い勝ち負けまで持ち込む前に疲れ果てて、引き分け。
就職を期にチームを抜けた先代が、例外的に悠紀仁を指名したと言う顛末まで聞いた。

まぁそうなるだろうなぁ。さっきの話では、悠紀仁以外の人はその先代に引き分けた事すら無いんだもんね。



『実力も人気もトップかぁ、やっぱり悠紀仁はどこ行っても皆の中心にいるんですね。』

「おんなじ高校……なんだよね?」

『僕は3年、悠紀仁は1年ですけどね。転校してきた日に校舎の案内したのがきっかけで。』


まぁ嘘はついてないさ。
ちなみにその日に悠紀仁のファーストキスを奪っているわけだが、これは今関係ない情報なので別に話す必要はない。


『あ、そうそう。
さっき入ってきた3人も同じ学校で……あの子達は悠紀仁と同じクラスなんですよ。
……澤村と合流したのは昼からなんですけど、すっごい打ち解けてますね。』


見慣れない顔をチラチラと気にするそぶりを見せる数人に説明口調で紹介……しながら視線を向けると

澤村と椎名と鈴峰と榊がまるで竹馬の友と見間違えるほど仲良さそうに談笑していた。

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