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極楽蝶華
まずはわかる人にだけ先制
 


喧騒の中心から部屋の対角に目をやると、そこには如何にも「不良」といったなりの人間が5人ばかり座っている。

その全員が、久々に会った悠紀仁に飛び付きたいくらいのフラストレーションを貯めながら、あっちで質問攻めにあっている悠紀仁にそわそわした視線を投げながら大人しく待機していた。


この店に来ているのは悠紀仁と親しい人だけ、とさっき言っていたけど。
 あの子は知らないのか、気付いていないのか分からないけど「総長」と呼ばれる悠紀仁がその全体人数を把握していないほど大所帯なこのチームで、この店に来るには恐らくある程度の地位が必要。
 そして、その一定以上の地位の中でも更にカーストが存在する。

悠紀仁はトップ……社長と言い換えるなら、今悠紀仁の周りにいる集団は全員が専務・常務クラス。こっちで遠慮しながら待機してるのは部長・副部長クラス、かな。




悠紀仁が引き摺られていってから、部屋を見渡した数秒で導きだした推測。
そこから一番僕にとって有益なストーリーを考えて足を進めた。



このコミュニティーの中で悠紀仁に近いところにいて、恋愛って意味で好意を持ってそうな人間はまだ観察しないと分からないけど。

少なくともこの空間でカースト下位にいるこの5人には今の時点で必要以上の牽制はする必要ないかな。


『どうも、今晩は。
悠紀仁……えっと、ここではユウ、か。あの子が転入した学校の3年の久遠と言います。初めまして。』



本名の下の名前を呼び捨て。
自分達が敬語使っている相手を「あの子」呼ばわり。
僕が主観の「入ってきた」。こっちの世界から転校「して行った」とは敢えて言わない。

しかし、初対面の自己紹介に相応しく態度だけは穏和に、好意的に。
……作ってるんじゃないよ。全力で計算高く挑むのが僕の素だもの。



普通の友達なら、いまの言葉にカチンとくる箇所はない。
初対面の時悠紀仁はやけに礼儀にうるさかったから、恐らくこのチームは上下関係に厳しいのだと思う。
 僕と悠紀仁は先輩後輩という情報を挟んだし、その関係を考えたら何も不自然な所のない自己紹介に聞こえるだろう。

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あきゅろす。
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