極楽蝶華
路地裏から
「えーっと、お店ってそこから入るんで良いんだよね?
……ところでこの店、食べ物出すみたいだけど何だか見た目は工場みたいだね。看板は出てたけど。」
『あぁなんか、溶接と塗装の作業場改装したんだって。表の通りに面してる半分は店舗で、裏っかわの半分と事務所だったスペースは俺らの溜まり場になってるんです。』
「随分と太っ腹なオーナーだね。」
そうだよなぁ。
店舗の面積広くしすぎると税金高くなるからこうしてる方がいいって言ってくれてるけど。
『俺らのチームの1代目の総長だった人なんですよ、ここのオーナーのトモさん。
店には一応チームのメンバーから会費っつーんですか、そんな感じのヤツ集めて家賃として渡してます。』
「案外真面目な活動してるんだね。それとも悠紀仁達のチームだけ?」
『真面目っつーか、集まる度どっかの店行くよりこっちのが楽で。』
路地裏に向けて設置されてる換気扇の吹き出し口から、何とも空腹を誘う匂いがしてくる。
ガーリックと、海老の香り……もしかして俺のお気に入り作ってくれてるのだろうか。
「……話からすると結構な大所帯みたいだね。チームは何人いるの?」
『さぁ……何人だかは俺はちょっとわかんないっすね……店に全員は入らないんで、ここに来るのは俺と親しいヤツだけだから心配しないでください。」
顔会わせたこともないのも入れると、全員が良い奴かどうかは断言できない……けど、普段この店に来てるヤツらなら絶対性格悪い人間はいない。それは言える。
「……そんなに多いんだ」
勝手知ったる裏口に手をかけ、ドアノブを捻りながら体重を込めた。
立て付けが少し悪いスチールがギシギシ鳴っていたせいで、後ろで呟かれた言葉は俺の耳に入ってこなかった。
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