[携帯モード] [URL送信]

極楽蝶華

 


普段から尻やら太ももにふざけてだかなんだか知らないがセクハラ紛いの接触をよくしてくる。けど。

されたことはただ手を撫で回されただけなのに、いつもよりずうっとタチが悪い。



くっそ、くっそ……!
放送コードにひっかかるような事はされてないはずなのに、何でこんな恥ずかしいんだよ、まったくっ!




「着きましたよー。
俺、車停めてくるんで先入っててください。」

『……、わかった。』


一向に熱の引かない顔を見られるのが恥ずかしくて、真っ先に車を降りて背を向けた。

むわっと肌にまとわりつく夏の夕暮れに、一気に汗が吹き出してくる。




「ゆー、何してんの?」

『あ……ちょっと、車に酔ったみたいだから外の空気吸ってから中入るわ。』

「確かにゆーあんま喋っとらんかったな。じゃあ俺、先入っとうよ?」



裏口の方へと向かうあちの足音が後ろから聞こえる。

もう一人の気配は、俺の背後から立ち去ろうとしない。……外は暑いと文句を言っていた筈なのに。

日が暮れてもじっとりと肌に絡む熱気に、指先の熱が冷めずに離れてくれなかった。



「悠紀仁、本当に酔ったの?」

アンタがそれを聞くのか。
答えが分かっているだろうに、あえて問いかけてくるその声は酷く楽しそうに聞こえる。

答えられずに黙秘を決め込んでいる俺の首筋に、奈緒先輩の細い指がかかって
するっとごく自然に後ろから抱き締められた。



「怒った?」

『……少しは。』

「嫌だった?」

『嫌とか嫌じゃないとか、そーゆー問題じゃなくって……』

「じゃあ行為自体が嫌じゃなかったんなら、怒ったのはTPOの問題って訳だね。」

『は……?』

「今度は二人っきりの時にするから。」


ちゅっと最後に耳に口付けされて、鼓膜に直接心臓に悪い音が響いた。



『んなっ?!』

「どうしたの?悠紀仁。顔が赤いけど。」

『奈緒先輩が……!
じゃなくて、何するつもりですか改めて!』

「期待してていいよ。」

『そうじゃない!』



こっちが慌てふためいて反抗しようとしてるのに、我関せずといった王子様は飄々と裏口へと向かう。

初めて来た筈なのに、多分そこから入るあちの事を見ていたのだろう。
こっちはタチ悪い悪戯でいっぱいいっぱいだったって言うのに、仕掛けた張本人は至って冷静に周囲の観察までしていたらしい。


そのまま奈緒先輩は、ムキになって何とか否定しようとする俺の事を楽しそ〜にからかいながら店の裏側まで歩みを進めた。


くっそくっそ

[*前へ][次へ#]

122/191ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!