極楽蝶華
険悪密室ドライブ
「えっと、ヨリさん……でいいですか?
俺、椎名誠っていいます。好きに呼んでください。」
「俺は榊潤言います。よろしゅうヨリさん。」
「鈴峰彰です。
……えっと、お店までよろしくお願いします。」
「そんなかしこまんなくていいよー。みんなユウさんと同い年?
あ、俺は水野亮介……って言うけど、そう呼ぶヤツ誰もいないから、ヨリで。」
「あ、はい。俺ら3人は悠紀仁と同じクラスなんですよ。……やっぱそのあだ名って敦さんですか?」
「うん、本名にカスリもしない何も関係ないこんなあだ名付けるの敦しかいないよ。
でももっとひっどい名前付けられちゃったヤツもいるんだよ?これが。」
「あ、それ噂の鼻毛さんすか?」
「あれ、知ってたの?敦から聞いた?
つーかこれマジでないっしょ、鼻毛とか、それが定着しちゃったのが一番ねーよって思うけどw」
「さっき敦さんもゆきやんも獅子緒先輩も、全員鼻毛さんの本名覚えてへんの、あれマジびっくりしましたw
当人にとっちゃえらい大事件やけど、もう聞くだけだと笑い話ですもんw」
黒いクーペに続いて発進したRXの車内では、初対面の人間の車に乗っているのにも関わらず和気あいあいとした空気になっていた。
ワゴンの横に立った「カズ」と呼ばれた青年が半分涙目になって何かを叫んでいる
その様子はRXのバックミラーに映り込んで、誰も見ないまま小さくなっていった。
「うわぁぁぁぁっ!!
あっちゃんのばかぁぁぁあっ!!裏切り者!一人だけ逃げた!ひどいっ……ばかぁっ!ばかばかばかぁ……」
「カズ、恨みごと言うのあっち行ってからにしろよ。車の免許持ってんのお前だけなんだから、早くしてくれ。」
ものすごく恨みがましい叫びをぶつけたものの、
角を曲がった2台が帰ってくるはずもなく。
圭介が「カズ」と呼んだ青年は肩を小さくびくつかせて涙目で振り向いた。
「さっさと出発する……のは賛成だけどさぁ〜
何であの中から友好的な子が全員抜けちゃってんだよぉ〜 ……総長なしでライと一緒とかただの罰ゲームじゃん……しかもLapis lazuliのシュンまでいるし……」
半泣きのまま運転席に乗り込み、すこぶる楽しくないメンツでのドライブに更に表情を曇らせながらエンジンをかけた。
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