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極楽蝶華

 

「どうだ見たかユウさんの鈍感っぷり!」

「狙っても思い付かないくらい斜め上の発想!」

「うちの総長のスルースキル舐めんなよっ」


『うっさい!
あ?じゃあヨリ、智則、カズ、お前らはこいつが俺のこと付け回してた理由がわかるっつーのかっ?!』

そういえば、
一応、俺転校する前に顔出せなくなるだろうから(一言だけだけど)チーム抜けるって連絡したのに何故俺の呼び名が総長のままなんだろう。


「えーっとー、多分ですねー、それ分かってないの総長だけだと思うんですけどー」

「俺、現在の全財産の1305円賭けてもいいっスよ。」


『ヨリ相変わらず常に金欠なんだな。』

入るだけ全部車に使ってるからなぁコイツ。







「久遠先輩、なぁんでさっき何も口突っ込まなかったんすか。」

「何?春日。」

「だから、会長のストーカー云々の話ですよ。俺、アンタが一番いいタイミングで台無しにしてくれるだろうと思って口つぐんでたんですけど。」

「……さっき僕が話を中断させたとして、その後どうなると思う?」

「は?」

怪訝な様子で不動が短い疑問詞を口にした。
それを気にもとめずに、まるで「答えられないのは分かっていた」とでも言うように奈緒は言葉を続ける。


「二人っきりになったときに悠紀仁がもう一度話題に出すかもしれないでしょ?

悠紀仁は俊の真意を想像できない。それは分かってる。でも他に人がいるこの場所だからこそ、俊はさっきあれ以上深追い出来なかったんだよ?

何で会いたかったのか、会って何がしたかったのか、それはどうしてか、……二人っきりで一つずつ話してたら俊が最後まで言っちゃうかもしれないでしょ。
まぁ、ギャラリーがいない場所でも万が一にだけど、ね?
態度デカイわりには腰抜けだけど、あの馬鹿が勢いで告白しないとも限らないから。」

「……何、もう負け認めて妨害しか出来ないわけ?」


「冗談やめてよ、今もこれからも負ける気も負けてる気もしてないし。
気まずくなったら悠紀仁が生徒会室に来づらくなっちゃうでしょ?」

「あぁ、そう言う……」

「他人事じゃなくて、お前も。勝手に悠紀仁に玉砕した挙げ句一方的に疎遠にしてあの子傷付けたりしないでよ。
お前、1番そーゆー身勝手な失恋しそうだから。」

「っぐ、」


自覚していただけあって超特大の図星を突かれた不動が低く呻いて視線を下に落とした。

今日だけで誠、カゴメさん、久遠先輩、か……
あークソ

指摘してくる人間が変わる度、その言葉は一番言われたくない核心に近付いていた。

「……確かに、今のままじゃ玉砕するだけだよなぁ……」


自問するような独白は、熱を孕んだ薄墨の空にそのまま融けていった。

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あきゅろす。
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