極楽蝶華
平常運転
『で、俊はストーカー呼ばわりされる程誰の事追っかけ回してたの?』
「……」
「…………」
「……あっちゃん。」
何とかしろよお前の相棒だろ、とばかりに呆れ顔になった3人の運転手が敦にツッコミを丸投げした。
「え、……あぁ、その。土日に何回か来とったみたいじゃな、
……俺じゃのうて本人に聞いたらえぇんじゃないかの。」
面倒臭くなったらしく、敦もオチを丸投げ。
なんで俺があんたらの色恋のフォローせなあかんのじゃ、とばかりに厄介事から顔を背けて2歩、3歩と後ずさった
『それもそうだな。
おい俊、誰が目当てだったん?』
近くに歩み寄って、自分より頭ひとつ高いその長身を下から見上げる。
うちのチームに女の子はいないから、恋愛系の話じゃあないだろな。彼女いる人も多いけど、誰もVogueには連れてこないし。
今の話しぶりじゃ店に何回か来てたらしいから、つー事は目的はいつも集まりに来るような連中のうち誰かって事だろ?
俊は男も恋愛対象に入るみたいだけど、Vogueに来てるヤツは全員あの時の殴り込みに参加してたし……まさか初対面が抗争だった相手に惚れることはないだろ。
それに、好きなヤツは学校にいるみたいだし。
「……俺の、目当ては……ッ、」
『ん?』
普段見ない、大人びたスーツ。着こなせるその体躯が羨ましい。
やっぱある程度タッパねぇと男くさい格好って締まんねーんだよなー。
「……お前、だよ、悠紀仁。」
『え?俺?』
夕日はもう殆ど落ちているはずだが、空はまだ橙と紫のグラデーションがゆっくりと夜を覆っている最中だ。
俊の顔が何で赤いんだろうと思ったが、多分西日の所為だろう。
「そーだよ。言っただろ?探してたって……お前に会いたかったかr」
『そういや言ってたなーあの時。ま、大丈夫だよ。お前は悪くねーの皆知ってるから。』
俺がそう言ったら俊だけじゃなくて周りまで心底キョトーンとした顔をして俺をガン見してきた。
ちょっと何何?
「……あぁ、確かに……言ったな。謝りたかったって。
……どうして、謝りたかったのか、とかよぉ。何でその相手がお前なのか、とかちょっと考えてみろ鈍感。」
そもそもあれは、俊のチームのヤツが勝手に俊の名前を語ってやらかした悪行だし……実行犯は俊が自分でボコって、首謀者も俺らに制裁するのに差し出しただろ?
コイツに謝るポイントいっこもねぇんだよな。他のことはただのお互い様だし。
『……?
! わかった!』
と、なると。
『改めて俺とタイマンしに……来た……んじゃ、なさそうだな。』
自信たっぷりだったが言ってる途中で俊が目に見えて呆れた表情をしてきやがったので、俺は自分の予想が外れたことを悟った。
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