極楽蝶華
似た者同士
「で、悠紀仁の……あー、知り合いが迎えに来てくれてるってのはこの先の駅前だっけ?」
チーム、やら族やらの今まで縁遠かった単語を街中で口に出すのが少し憚られたのか、少し言いよどむ誠。
『そうそう、免許持ってるのが迎えに来てくれるって。
電車で行くと地下鉄と私鉄乗り替え3回で駅から結構歩くからさぁ、良かったわー。
あ、今から行く店のマスター、料理めちゃくちゃ美味いから期待しとけよ?』
「悠紀仁が言うならそうなんだろうな。
よっし、じゃあそれまでちゃんと腹空かしとくわ。」
言いながら彰がポッキーの箱を鞄にしまう。……それを見て俺もご飯時前にお菓子は止めとこう、と新しい板チョコに伸ばしかけた手を引っ込めた。
今の感触……うーん、流石明治ハイミルク……融点をとっくに通りすぎた板チョコが鞄の中でチョコフォンデュができそうなくらいトロトロになってしまっている。
夏だししょうがない、帰ってから冷蔵庫に入れてもっかい固めて食べよう。溶けてもおいしいけど、アルミホイル舐めるのは食べにくいからな……
「猛、お前買うものあるとか言ってたけど用事すんだのか?」
「うん、悠紀仁達が注文してる間にさぁ、距離そんな離れてなかったからタクシーでピャッと行ってきた。
前金と、オーダーの確認に。」
「……何買ったんだ?」
「ん?オニーチャン、気になる?」
「……悠紀仁関係か?」
「やっぱ俊、鼻きくな。でもこれ以上はナイショ。」
ナイショ、と言われた俊は考え込んだ。
今日の昼、買いたいものがあるからと猛の財布に入ってたのは現金で70万。
……今年の始めに俺が注文したスカジャンは、確かフルオーダーして……えっと、10万ちょいだったっけ?
(正解は148,000円。約5万を「ちょい」扱いしないでいただきたい)
それであんなに「高いものを」と怒られたんだから、もし猛が財布の中身を全部悠紀仁のために使ったのなら、アイツもスゲー怒られんじゃねーの?
「……アイツも怒られればいーんだよ。
大体、俺と対して変わんねーだろやってること。その上最近頭がおかしい事ばっかしてるくせに、悠紀仁は猛に甘過ぎんだろ。」
来月の悠紀仁の誕生日にもう一度プレゼント買って行ってまた怒られるおぬしには言われたくなかろう。
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