極楽蝶華
お揃い
「お前こそ二つも取ってどーすんだよ。」
「隆也さんただいまっ!
ネコ耳やっぱ可愛いですよー」
答える前に、村上先輩の背中から悠紀仁が抱き着いた。
頭上にピンと立ったネコ耳を上機嫌な悠紀仁が手を伸ばして指先でモフり始める。
途端、村上先輩の双眸が少し緩んだ。やはり、まんざらでも無いらしい。
「ユウ、俺には?」
「んー、レオも可愛い可愛い。」
その体勢のまま悠紀仁が見を屈める獅子緒先輩の頭に手を伸ばした。
から、3人の位置関係がすごいことになってる。
村上先輩の背後から手を伸ばして獅子緒先輩の頭を撫でる悠紀仁。獅子緒先輩はそれに合わせて見を屈めていて、都合……その、アレだ。
村上先輩が二人の間に挟まれて抱き着かれる格好になってる。
悠紀仁しか目に入ってない獅子緒先輩がゴリゴリ猛プッシュするせいで獅子緒先輩の肩口に顔を埋める形になった村上先輩の顔が一瞬で般若になった。
クワッ、と眉間にシワを寄せた後、左手で獅子緒先輩を押し退けてあっと言う間に体を入れ替えて悠紀仁と向かい合う。
あまりの早業に感心してしまった。
「悠紀仁様、色違いで2個取ったのですが、良かったらおひとついかがですか?」
そして袋から取り出したクマの顔をしたポーチを取り出して悠紀仁の前で軽く振った。
ふ、と何かを思い出したようなそぶりを見せた村上先輩が、
肩越しに後ろを振り返って咄嗟の事に肘から先を掲げたまま固まっていた獅子緒先輩を
「良いだろう、お揃い。」
とでも言うようにドヤ顔を微かに浮かべて一瞬だけ見遣った。
「ズッ……ズリィ、お前、そのために2個取ってたのかよっ!」
「何がですか。
別に狡くはないでしょう?2つあっても余るから良かったらどうですかと言っただけですよ……悠紀仁様がお好きなキャラクターでしたから。」
あくまでも偶然を装ったが、絶対に分かってやってるだろ、村上先輩……
だってあの人キャラ物持ってるところ見たことも無いぞ。私物全部モノトーンで纏めて、中にはブランドロゴすら無いような高そうなオーダー品らしきものも数点見受けられるのに。
(自分に縁はないが周りに金持ちが多いので目は肥えた)
「えっ、じゃあじゃあ、俺こっちのノーマルカラー貰ってもいいですか?」
「えぇ、喜んで。……お揃いで使っても構いませんか?」
「そんな、嫌な訳ないですよ。俺こそ喜んで。」
にぱ、と笑った悠紀仁を見て村上さんの口元に幸せそうな笑みが浮かんだ。
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