極楽蝶華
しんみり
『おぉ……何と言うか……案の定と言うか………』
カスタムジーンズの注文が終わり、それなら俺達もと注文してた組がカゴメさんに挨拶をして向かいのゲーセンに入ってすぐだった。
俺らが探すまでもなく、一緒に来た人達が良い意味でも悪い意味でもひと目でわかる程目立っていた。
あっちで有名なレーシングで対戦しながら怒号飛ばしあってお互いの進路妨害しながらトップ争いをしているのは琉崎先輩達、
入口近くのクレーンゲームのガラスに今にも鼻がつきそうなくらいかぶりついて超真剣な顔してるのは獅子緒と村上先輩。
久遠先輩はダンレボをプレイ中の悠紀仁達を少し離れた所から興味深そうに眺めている……、っと女の子に声かけられてる。
のを、めんどくさそうに追い返した。
……学校だとわざと女性ぽい所作を装っていたんだろう。
確かに睫毛長いし綺麗な顔してるけど、今日の久遠先輩はどこから見ても男の人にしか見えない。(中性的な美形であることは変わらないけど)
作っていない久遠先輩をじっくり観察するのは初めてだったが、育ちが良いから仕種は乱暴ではないけど立ち居振る舞いが本当は男臭いんだと知った。
都合が良いから、と言っていた。多分、会長達にガンガン口撃してちょっと(結構?)厭味っぽい、悠紀仁にだけ弱い今日見てきた方の顔が素なんだろう。
口元が緩んでる。
悠紀仁と普通の友達みたいに外出して、もしかしたら今日が初めてのゲーセンかもしれない。
マックも初めてだったみたいだし……もしかしたら、友達と遊びに行くってことも初めてなのかもしれない。
「わざとそう思わせていた」って言ってたけど。
この人達のこと、ただ別の世界の人だから、と俺達は知ろうとしなかった。
普通に笑ってる顔を見て初めて分かった。
いつもの顔は作ってたって。
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