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極楽蝶華
しかし魅力には抗えず。
 


いや、でも、職場の人間が実はいい人達だと分かった今、時給2000円が魅力的過ぎてしょうがない。


正直、久遠先輩と琉崎会長達の誤解を知る前でも、
“生徒会雑務
時給2000円。部活・勉強などに考慮。勤務時間の相談に乗ります”
とか募集されてたら多分応募してると思う。

あ、でも普通のバイトみたいに募集してたら競争率すごそうだな……なんたって会長の親衛隊の人とか金払ってでも近くに行きたがるだろうし。


「……お、俺、成績Aクラスギリギリなんで、手ぇの空いてる人が暇なときに勉強教えてくれるなら、雑用でも何でもやらせてもらいます。」

俺が時給で目の前を占領されて完全に雑務引き受けるモードになってた時、
携帯電話に向かって潤が震える声で要求を出した。

確かに生徒会は頭いい人ばっかりだけど……
お前、かなりのチャレンジャーだな……


[ふーん……ま、いいよ。じゃあ、早速明日からお願いね。
体が空いてからで良いから、寮の生徒会室に来てくれる?……最上階に入る方法はまた後で話すから。じゃあね。]


ぷつ、つー、つー、つー、

宙ぶらりんのままだった透君のケータイから、無機質な電子音が鳴りはじめた。
どうやら通話は終わったらしい。


「じゃ、兄貴達の事よろしくお願いします。」


透君が年相応に子供っぽく笑った。
潤も彰も俺も、それに応えるように何となく笑みを浮かべて4人で顔を付き合わせた。



この時俺らはまだ知らなかった。
“手の空いた人が暇なときに気が向いたら俺らに勉強教えてくれる”のが、
2割悠紀仁、4割村上先輩、4割獅子緒先輩になると言うことを。

監督の立場の悠紀仁が暇なのはともかく、手ぇ怪我してて出来ることが限られてる人が2人もいることを完全に失念していたこともあるが、

何より久遠先輩が電話越しの口約束を律儀に守ってくれたからだった。
有り難いけど、正直泣きたかった。

お陰で潤の秋の全国模試の点数なんて1教科平均5点も上がることになり、学年順位も上がってクラス落ちの危機は去ったが、(俺も彰も下の方なりに上がったけど)
そこにたどり着くまでの
対:先輩の少人数制の授業では胃に穴が空くような努力をすることになるのはまだ少し先の話。

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