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極楽蝶華
各々の思うところ
 




『……後で、謝んないと……ありがとうございますも、言ってないのに……』

「そー言やぁ、
何やいつだったか、灰斗の親衛隊の話がピタッと止んだ事があったやん?あれも今考えると変やなぁ。
あん時、多分久遠先輩が裏で手ぇ回してくれたん思うんよ。……俺ら、自分達の話が通じたってそう思てたけど。」

「……確かに、久遠先輩が灰斗に口説くようになって……それから灰斗が他の先輩とかにちょっかい出されなくなったよな。
まぁ、嫌がらせ程度はあったけど俺達で自衛できるようなモンだったし、あのままちょっかいがエスカレートしてた時の方が怖ぇーよ……」


はぁ、と罪悪感に似たよくわからない感情を持て余して腐っていると、にこやかな笑顔を浮かべた透君が潤の肩をぽんぽん叩いた。


「奈緒さん言い方キツいし無意識に精神攻撃するくらいのドSですけど、悪い人じゃないっすよ。
今のは怒ってないし、責めてる訳でもなかったですよ?
うちの兄貴達も多少傍若無人だけど、口が悪くて威圧感があるだけで理由も無しに人の事殴ったりしないし。」

それはフォローしてるのか?けなしてるのか?


「……透、お前自分の他にパシリ増えるんが嬉しいだけやろ。」

「否定はしません。
ねぇ、どうですか?交渉すれば部活に影響でない範囲での活動にしてくれると思いますし。うちの学校の生徒会入ったら進学にも有利ですよ?」


部活馬鹿の彰は置いといて、俺と、あと多分潤も“進学に有利”の言葉にグラっときてしまったらしい。

それを見逃す中等部生徒会長ではなく、すかさず追い撃ちをかけてきた。


「……高等部の方は、リアルに猫の手も借りたいって状況なんですよ。
ややこしいところは奈緒さんと村上さんが大体やってるんで、飲み物の給仕とかコピーとか掃除・片付けその他雑務があるくらいですね。
あと、これ、一般の生徒知らないんですけど、生徒会役員はバイト代出ますよ。」


バ イ ト 代。

その言葉にとてつもなくぐらついた。
俺は悠紀仁と同じグレードの寮の部屋に入ってはいるが、それは俺の家が裕福だからではない。

俺が特待生だからだ。

面倒臭いから色々と省略すると、俺が小学生の時にTOEFLとTOEICというテストでその年の日本人の最高点を取ったら、どこからそれを聞いたのか数日後光陵学園から特待生・授業料と寮費無料扱いでうちに入学してくれないかと家にスーツの男の人達がやって来た。

そして中等部から入学して今に至る。ちなみに彰はバスケのスポーツ特待枠で中等部から、
将治は普通に受験して中等部から。
俺らの中では潤と灰斗だけ初等部からいるのか。

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