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極楽蝶華

 



「……仕方がなかったから、かな。
だって、校内の暴行事件の加害者に正式に処分下したら被害者の名前だって漏れちゃうでしょ?
……僕と、俊と猛の3人で秘密裏に処理してたんだよ。二人に“気に食わないから殴った”ってことにしてもらって……加害者に制裁と言う名のリンチを。

今まで俊と猛がどんなに暴力沙汰起こしても処分が無かったのはその所為。
 特に理由も無しに二人が問題行動起こすことになってるのも……この所為。
 理事長と、生徒会顧問の涼皇寺先生だけはこの件について了解してる。」



口を開こうとしたけど、喉が乾いて言葉が張り付いて出て来なかった。



なんで、あなたはそれを今話そうと思ったんですか。




久遠先輩が俺達3人の顔を見回して続けた。


「悠紀仁の友達に嫌われたくないって言うのが一番の理由かな。誤解を作ったのはこっちだけど、好きな人の友達が怖がる所為で悠紀仁自身との接触も制限されるのは流石に苦しいからね。
恩は着せたくなかったんだけど、僕も大概友達少ないからさ。ま、獅子緒程じゃないけど。
誤解の解き方なんてわかんないんだよ。上から目線に聞こえるだろうけど許してね。」


淋しそうに笑った後、久遠先輩は横に置いてあった残り少ないアイスコーヒーを飲み干してから言葉を続けた。



「……俊と猛には、僕が頼んだから、かな。
被害者のために、表沙汰にしないで加害者に制裁を加えたいって。
そうなるのを分かってて、僕があの二人の周りからの評価をそうさせてしまったからね。

……俊も猛もそう思われることも込みでそれでいいって言ってたけど、僕が原因で君達が怖がってる事については誤解は解いておきたかったから。」



全てが初耳だった。

当たり前だ。見返りなんて求めてなかったんだから。


「悠紀仁にはこの話、言わないでね。
あの子は多分、知らなかったことで自分を責めてしまうから。
……相原君と筑波君には誤解だけ解いておいてくれないかな。僕から言っても信憑性薄いし。」


自然なモーションで席を立った久遠先輩が、最後に悪戯っぽく笑って小さく呟いていった。



 あの二人の下半身の悪評については、大体事実だと言わざるをえないけど、ね?



からんころんからん、


最後に少しのユーモアを滲ませて
ひらひら、と手を振る背中がドアを開けながらそんな事を言う。

彼の意識は既に向こうにあるらしい。




俺がやっと頭の整理がついて顔を上げたときには
今までの謝罪も、影から手を回してくれていた感謝もする前に久遠先輩は階段を下りてしまっていた。

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あきゅろす。
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